本研究は,津波対策構造物として最も重要なものの一つである海岸堤防について,その最適な形状・構造を検討することを目的とするものである.2011年東北地方太平洋沖地震津波における海岸堤防の主要な破壊要因として挙げられる堤防背後における局所洗掘は,堤防が残存する場合に津波減勢効果を有するものと指摘されている.この研究では,この局所洗掘に着目し,その発達過程および津波減勢効果を水理実験を通して定量的に評価し,さらにその効果を数値シミュレーションに組み込むことで減災効果を評価可能なツールを構築した. 前年度までの研究ではまず水理模型実験に基づいて(1)堤防背後における洗掘形状の発達過程の調査および(2)洗掘孔によるエネルギー減衰効果の調査を行い,洗掘がない場合と比較して最大で40%程度流れのエネルギーが低減されることを明らかにした.次にこの局所洗掘形状およびそのエネルギー減衰効果を経験的にモデル化し,これを津波遡上シミュレーションに組み込むことで,より陸側の地点における減災効果の評価を可能なツールを作成した.また,これにより自然に洗掘が発達する場合に減災効果が得られるのが,最大水位・流速の発生後となり,人工堀等で予め堤防背後に孔を置くことで減災効果が得られることを示した.最終年度では,解析を半壊状態(堤防裏法面のみ破壊)の条件や裏法尻に保護工のある条件についても対象とし,水理実験結果の解析および数値シミュレーションへの組み込みを行った.これにより通常の堤防形状(コンクリート三面張り),半壊状態(裏法面のみ被覆しない条件),裏法尻保護の3つの条件での比較を行った.
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