研究課題/領域番号 |
16K18155
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
寺崎 寛章 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (40608113)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 太陽熱淡水化 / 蒸留 / バングラデシュ / 僻地 / 飲み水支援 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とするバングラデシュの僻地では、乾期には水不足に陥り、衛生的な水を手軽に手に入れることは非常に難しい。これらの状況を鑑みて、本研究では太陽熱淡水化装置を学術面と実用面の両面から検討を行っている。平成30年度には①対象となるバングラデシュパイガサ地域の漁村に適した三角型太陽熱淡水化装置(TrSS)の再設計および試作機の開発、②TrSSの水コストの試算、③対象となる村でのTrSSの導入および造水量調査、④水質改善効果の検証をそれぞれ行った。 ①に関して、昨年度の現地でのTrSSの導入結果を踏まえて、TrSSを再設計した。具体的には、造水量を改善すべく、装置を昨年度の1.5倍大きいものを試作し、また蒸留水が汚染されないよう集水口を改良した。現地でのコストを鑑みて、トラフやビニールのサイズは現地の定規格のものを基準に作製した。また、同地域での普及を目指して、その設計から製作に至るまでの技術を、バングラデシュの現地パートナーに教えた。 次に、昨年度と同様に装置の変更に伴い②TrSSの水コストを再度試算した。その結果、6年間使用した場合、現地において乾期にTrSSを使用した場合,長さ1.0 mおよび1.6 mにおけるTrSSの水コストは現地の基準コストと同程度であることが分かった。再設計した装置を現地に導入した③では、造水量は昨年よりも1.5倍程度(速報値)増加したことが確認された。ただし、天候不順(突発的な嵐が襲来)に見舞われたため、装置の導入が3月中旬まで遅れ、装置の破損などが生じた。現在はそのデータを分析中である。最後に、今年度は大腸菌に焦点を絞って、水質分析を日本で行った。その結果、TrSS における大腸菌の太陽光による殺菌モデルを提案することができ、下水の二次処理水を用いた実験では、屋外の太陽光でも十分に殺菌できることを理論および実験の両面から示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたバングラデシュでは、平成28年(2016年)7月のダッカ邦人テロが起こったため、本学において渡航禁止措置が行われ、また研究の中止が検討された。また平成30年度の乾期の2月より導入を試みたが、現地住民も想定外の嵐が襲来したことにより、現地に装置を運ぶことができず、現地が冠水したため、研究に遅れが生じた。これらの理由により、一年間の研究延長を行い、今後は計画(渡航時期や経費の使用項目など)を見直し、円滑に研究が進むように尽力する。
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今後の研究の推進方策 |
テロや天候の急変等の影響により、研究中断時期を挟んでバングラデシュへの渡航および現地での活動を再開した。遅れが生じたものの、現在は試作機の設計および現地導入を行い、現地への技術移転は進みつつある。これらの結果を踏まえて、①造水量の向上、②試作機の改良、③現地への普及を考えて、研究計画を練り直す予定である。同時に、得られた研究成果を少しでも社会に還元するため、論文の公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年(2016年)7月のダッカ邦人テロが起こったため、本学において渡航禁止措置が行われ、また研究の中止が検討されたため、使用額に変更が生じた。そのため、本研究は1年間を延長して、研究を継続する(承認済み)。研究を安全かつ円滑に進めるため、現地の研究パートナーおよび共同研究者に一部、研究を依頼し、その費用に充てる。また研究成果の公表に最大限努めるため、研究費の一部は論文投稿費用(英文校閲費用を含む)に充てる予定である。
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