研究課題/領域番号 |
16K18156
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
趙 容桓 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00761082)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 混合土砂 / 抜け出し / 初期移動限界 / 粘土含有率 |
研究実績の概要 |
本研究では,波浪場における砂と粘土からなる混合土砂底面を対象とし,粘土の抜け出し現象および混合土砂の挙動特性を検討すると同時に,混合土砂の初期挙動に着目した漂砂計算手法の開発を目標としていた.研究実施前に前年度実施したガラスビーズと砂からなる混合土砂の移動特性に対する検討を行った. まず,粘土の抜け出し現象においては,底面表層に限らず,下層数cmまで生じることが確認され,粘土抜け出し現象による混合土砂地盤の含有率変化は波浪の進行方向の水平変化だけではなく,水深方向の鉛直変化も考慮する必要性が示唆された.また,同波浪条件下では,初期抜け出しが発生した後,一定値に収束することから,底面流速の大きさによって粘土の抜け出しが発生する混合土砂層の深さが変化することが分かった.混合土砂を構成するガラスビーズ,粘土,ガラスビーズと粘土の初期移動限界は,初期粘土の抜け出しが生じた後にガラスビーズの移動が確認されたため,粘土とガラスビーズ,粘土,ガラスビーズの順で移動限界が大きいことが分かった.以上の結果を踏まえて,同波浪条件での砂と粘土の混合土砂の抜け出し現象を断面に次元水理実験を実施した.その結果,ガラスビーズと粘土からなる混合土砂の抜け出し現象と同様の傾向が確認できた.ただし,砂の場合,個々の粒子の異なる形状より遮蔽効果があり,粘土の抜け出し量に影響を及ぼすことが確認された. 漂砂計算手法の開発では,砂と粘土の幾何学的構造より誘導した式をはじめ,粘土含有率の変化による混合土砂の空隙率を計算できるモデルを構築した.粘土の抜け出しによる粘土含有率の変化については,今年度実施した実験の結果より底面流速と粘土抜け出し速度の関係を検討してからモデルの妥当性を検討する見込みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画の研究目標の一つであった混合土砂の移動特性を究明する水理実験から,初期混合土砂の地盤を造成する際に混合した粘土とガラスビーズおよび粘土と砂の敷き均す方法によって粘土の抜け出し傾向が異なることが確認された.そのため,異常な粘土の抜け出し現象が確認された場合,同条件の実験を繰り返した.また,ガラスビーズからなる混合土砂の場合,個々の異なる形状から生じうる遮蔽効果で粘土の抜け出し量に影響を与える懸念があったため,実際の砂からなる混合土砂における粘土の抜け出し現象を検討する追加実験を実施することに及んだ.その結果,平成29年度の計画であった混合土砂からなる海浜の安定性評価実験や粘土の抜け出し効果を考慮した漂砂モデルの改良および検証が遅延されている現状である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施された水理実験の結果より,底面流速と粘土抜け出し速度の関係を検討すると同時に,構築した漂砂計算手法を漂砂計算モデルに組み込み,モデルの改良および検証を実施する.まず,モデルの改良においては,水理実験の再現計算を実施し,混合土砂から抜け出た粘土量の評価と粘土の抜け出しによる混合土砂地盤の粘土含有率変化の検討を行う.その後,抜け出された粘土の移動・拡散特性について検証を行い,既往の砂に基づいた移動・拡散式の有用性について検討する.最後に,混合土砂からなる海浜の地形変化特性を究明する水理模型実験を実施し,粘土含有率による海浜の侵食応答特性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在,当初実施計画より遅延している現状であるため,研究期間の延長によって未実施である漂砂モデルの改良および検証に必要となる計算用デスクトップの購入と混合土砂からなる海浜の地形変化特性を究明する水理模型実験に関連する実験材料(標準砂,粘土,ベニヤ板等)の購入が遅延されている. そのため,平成30年度では上記の計算用デスクトップおよび大容量の数値計算結果を保存する外付けハードディスクを購入し,水理模型実験に伴う実験材料(標準砂,粘土,ベニヤ板等)を購入する見込みである.
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