研究課題/領域番号 |
16K18163
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 健太郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20706957)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交通信号 / 系統制御 / 交通流 / Kinematic Wave 理論 / 変分理論 / ランダム到着 / 組合せ最適化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,交通信号群の系統制御に対する見通しのよい最適化手法を構築し,大域的に最適な信号制御パターンの特性を明らかにすることである.具体的には,(1) 交通流の時空間ダイナミクスを考慮した上で,3種類のパラメータ(サイクル長, スプリット,オフセット)を同時最適化する新たな問題の提案,(2) その問題を効率的に解くアルゴリズムの開発,(3) 系統的な数値実験による大域的な最適制御パターンの特性分析,からなる. 初年度にあたる平成28年度では,(1) 最適信号制御問題の定式化とその拡張を行った.まず,昨年度から予備的な検討を行ってきた,交通流の変分理論を用いた信号制御問題(基本問題)をよりコンパクトに定式化した(i.e., 従来のセル単位の定式化をリンク単位に再定式化し,現実的な交通信号制約をネットワーク制約として表現する手法を開発した).これにより,最適化問題の変数および制約数を大幅に削減することができた. 次に,基本問題を交通需要のランダム到着を考慮できる枠組みへと拡張した.ここでは,交通流の変分理論に基づく新たな確率的交通流モデルを提案し,状態変数の期待値および分散を解析的に近似する手法を構築した.また,この手法が高速かつ極めて高精度に信号遅れの期待値(目的関数)を評価することができることも数値実験により明らかにした.そして,この手法を組み込んだ確率的な最適信号制御問題を定式化し,そのヒューリスティクス解法を構築した. 最後に,開発手法の有用性を示す例として,実道路路線を対象とした信号最適化の検討を行い,系統制御の最適サイクル長の特性について考察を行った.また,手法の応用例として,市街地における単路部横断歩道運用方式(1段階横断,2段階横断)の効率性比較を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度に予定していた (1) 最適信号制御問題の定式化とその拡張,をほとんど終え,平成29年度に予定している (2) その問題を効率的に解くアルゴリズム開発,の一部も着手することができており,当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の平成29年度では, (2) その問題を効率的に解くアルゴリズム開発,を早い時期に完了させ,あるいは並行して,(3) 系統的な数値実験による大域的な最適制御パターンの特性分析(本格的な分析は平成30年度に予定)の一部を開始する予定である.さらに,数値的な分析だけでなく,状況を簡略化した上で解析的な分析を行うことも予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の経費は,主に数値実験に用いるワークステーション・数値計算言語MATLABの購入,関連研究者との打ち合わせ・学会参加旅費,成果発表のための論文掲載料・英文校正費にあてる予定であった.しかし,実施計画のうち,モデルの定式化やその解法で当初計画以上に進展があったため,大規模な数値実験には至っていない.また,海外研究者との研究打ち合わせを平成29年度に延期したこともあり,次年度使用額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,当初の計画通り,数値実験に必要な設備整備および海外研究者との打ち合わせ旅費(米国)にあてる予定である.特に国際共同研究を開始する予定のため,旅費により多くの経費を使用する予定である.
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