本研究全体の目的は,交通流の時空間ダイナミクスを,位置・時刻固有の属性とそれらに対する車両・運転者固有の反応により説明する理論の構築と実証であった.また,その小目標は.(1)車両の異質性を明示的に考慮した交通流理論の構築,(2)異質性が交通流のダイナミクスへ与える影響の理論解析,(3)実データに基づく本理論の実証であった.平成31年度の研究計画は,(i)実交通流での車両の異質性の大きさの推定,(ii)実交通流の性質の長期・短期変動を,異質性の観点から説明,(iii)モデルの再現性の検証,であった. 結果として,平成31年度の研究計画は概ね予定通りに達成した.全体の目的に関して,(1)については,ラグランジュ座標系に基づき,各車両の挙動パラメータが異なるもとでの交通流モデルを構築し,その数値解法を開発した.(2)については,モデルに基づきマクロな状態を数値的に予測する方法を構築した.(3)については,推定手法を開発し,実プローブデータや全車両軌跡データに適用し,良好な推定結果を得た.
|