研究課題/領域番号 |
16K18167
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 拓真 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任助教 (30745964)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EMS / ITS / 時間付きマルコフモデル |
研究実績の概要 |
本研究テーマでは、低炭素社会の実現の取り組みとして、電気自動車やプラグインハイブリッド車の車載蓄電池を有効活用するための車の使用予測手法の研究を行っている。 電気自動車やプラグインハイブリッド車は容量の大きい蓄電池を搭載しており、乗り物(Intelligent Transport System:ITS)としての利用でだけではなく、動く蓄電池(Energy Management System:EMS)としての利用も提案されている。しかし、電気自動車を蓄電池として利用するときは、利用者が電気自動車を運転していない状況に限られてしまう。そのため、蓄電池として利用するためには、利用者の使用状況に合わせた車の使用予測が必須となる。また、電気自動車は移動できる蓄電池であるため、自宅に限らず勤務先や商業施設などのEMSにも活躍を期待することができる。そのため、移動予測を行う際には利用者の行先まで予測したほうが好ましい。 今年度では、時間付きマルコフモデルを用いた利用予測手法の開発を行った。このモデルをモデルを計算しやすいように展開を行い、動的計画法と呼ばれる数理計画アルゴリズムを適用を行った。このアルゴリズムの適用により、膨大な計算量を必要とする問題をリアルタイム(100msec以内)で計算することが可能となった。また、時間付きマルコフモデルの状態拡張を行い、移動先の予測も行えるように拡張した。これにより、車の利用時間だけではなく、移動先まで予測することが可能となり、自宅や勤務先のEMSなどの複数拠点間のEMS連携が可能となることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
車の利用計画手法として、当初の計画通り時間付きマルコフモデルを利用した。このモデルを私の所属する研究室のデータに適用したところ、個人差もあるが約8割程度の正答率であることを確認することができた。また、当初問題となっていた計算量に関しても、リアルタイム(100mec以内)に計算できることを確認できたため、当初の計画通り順調に進展していると考えている。 研究計画では個人差の影響を考慮するため、車の利用者の分類(主婦、通勤会社員)を行うことを計画していた。しかし、ITSとEMSを融合という観点では、車の移動先の予測が重要ではないかと考えた。移動先の予測を行うことにより、車としての走行と蓄電池として利用をスムーズに行えるようになるだけではなく、複数拠点間のEMS連携も可能となる。このようなEMSを実現することができれば、EMSとITSを包括したマネージメントシステムが可能となるのではないかと考えている。以上より当初の計画を変更し、車の移動先の予測手法の開発を行った。 研究発表としては、計測自動制御学会論文誌に車の利用予測手法について投稿を行い、採択されている。以上よりおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度では車の利用予測手法の開発を行い、さらにその移動先の予測を行った。この予測モデルを評価する、またITSとEMSの連携を行うために、車の移動予測を組み込んだEMSの評価を行う。混合線形計画法として定式化したEMSを過去研究していたため、このシステムに適用を行い評価を行う。また、その際に車の移動先の考慮を行い、複数拠点間のEMS連携を考える。具体的には、自宅のEMSと勤務先のEMSの連携を考慮する。自宅では、夕方時間帯の電力使用を車載蓄電池により賄い、深夜電力を利用した充電を行うなどの利用が考えられる。勤務先では、太陽光を利用した車載蓄電池の充電や電力のピークシフトなどの利用が考えられる。 このように、移動先まで考慮した車の利用予測を行うことで、車の移動と移動先におけるEMS連携を考慮することができるようになり、ITSとEMSの融合が実現できると考えれる。次年度はこのような研究の推進方策と取る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では計算用PCを必要としていたが、開発した車の利用予測手法の計算量が想定よりも少なく、高性能な計算用PCを必要とせず、高性能計算用PCを購入しなかった。そのため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
開発したアルゴリズムでは、高性能な計算能力を必要としないことが分かった。そのため、計算用PCを購入せず、ドライビングシミュレータを利用した車の移動(ITS)と蓄電池(EMS)の融合を考える。具体的には、ドライビングシミュレータの導入を行い、車の移動予測の検証を行い、EMS融合の検討を行う。ドライビングシミュレータは通常高価であるため、予算内の導入は困難であるが、所属する研究室には既にドライビングシミュレータを利用すれば予算内に導入することができる。 このように高性能計算用PCの導入の代わりにドライビングシミュレータの導入を行う予定である。
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