研究課題/領域番号 |
16K18173
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
稲葉 愛美 北海道大学, 工学研究院, 博士研究員 (60749448)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 下水 / 抗体遺伝子 / 抗体医薬品 |
研究実績の概要 |
流入下水中の抗体遺伝子の回収・検出法を確立することを目的とし、樹立株化B細胞(15310-LN)を用い、検討を行った。採取した下水流入水に株化B細胞を添加し、B細胞の表面に発現している機能分子が検出可能か検討したところ、添加B細胞は浸透圧の変化により添加後著しく急速に形状が変性することが確認された。また、下水流入水に添加したB細胞の機能分子CD19,20,40が検出可能か、蛍光抗体法による顕微鏡観察を行ったところ、B細胞の機能分子は検出されなかった。このことから、下水中のB細胞の抗体遺伝子の検出を目的とした回収手法として、細胞表面に発現する機能分子を対象とした特異的な回収手法は適切ではないことが確認された。 一方で、B細胞添加下水試料をPEG沈殿法により濃縮回収した試料に対し、既報のPCR法によるDVJ領域の検出を行った。その結果、添加後24時間の試料からも特異的な産物の生成が確認された。しかし、非特異的な産物の生成も多く確認され、PCR法の検出感度を向上させる必要があると考えられた。 以上のことから、下水流入水中の個々のB細胞の機能分子を対象とするような特異的な回収方法ではなく、PEG沈殿などの全回収による手法での検討が必要であると考えられる。B細胞の添加後24時間の下水試料をPEG沈殿回収したサンプルからVDJ領域遺伝子が検出可能であったことから、下水中の抗体遺伝子は収集が可能な可能性が得られた。また、対象下水試料の容量を増加させることも検討が必要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下水流入水中のB細胞の抗体遺伝子の効率的な回収、検出手法が当初想定していたB細胞の表面に発現している機能分子を対象としたものでは適切でないことが確認された。現在、抗体遺伝子の網羅的解析において重要な高感度な回収、検出手法の検討中であり、遺情報収集に至っていない。しかし、樹立株化B細胞を陽性対象とし、遺伝子自体を対象とした回収、検出手法の適応や、DVJ領域検出用のPCR法の感度を向上させるなど、検討中であり進展も見られている。研究計画から遅れはあるものの、進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究により、下水流入水中に存在するB細胞の機能分子(CD)を対象とした回収、検出は困難であることが確認された。平成29年度は、下水流入水中に存在するVDJ遺伝子を直接的に検出する手法で進めるべきだと考える。下水流入水を大容量で濃縮し、核酸抽出、PCRによるVDJ領域の検出を考えている。また、既報のVDJ領域を対象としたPCR法を用いたが、感度を向上させた検出法の確立を検討する。 本研究課題では、下水流入水中からB細胞抗体遺伝子の検出手法の確立が最大の鍵であり、高感度回収、検出方法の確立を中心に、抗体遺伝子の網羅的な情報収集、解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
下水流入水中のB細胞遺伝子の高効率回収法を確立できなかったため、計画していたNGSによる抗体遺伝子の網羅的遺伝子解析の執行がずれこみ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
執行はずれこんではいるが、解析自体は今後当初の計画通り実施する予定である。
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