さまざまな感染症治療に利用価値が高いと期待される抗体医薬品の開発を目的に、流入下水中に存在する抗体遺伝子情報の網羅的解析を試みた。 まず、下水流入水中のB細胞の効率的な濃縮・回収方法とし、B細胞表面に発現している機能分子を対象とした磁気ビーズ回収法の検討を行った。採取流入下水に添加した樹立B細胞の機能分子(CD19、20、40)の蛍光抗体法による顕微鏡観察により、特異蛍光は確認されず機能分子を対象とした磁器ビーズ回収は適切ではないこと確認された。そこで、樹立B細胞を添加した下水流入水の核酸を全回収した試料に対して、既報のPCR法によるVDJ領域の検出を行い、特異的産物の合成が確認された。しかし、複数の非特異的な産物の合成も確認されたことから、さらに高感度なPCR法の確立が必要とされた。ゆえに、VDJ領域を対象とした網羅的な遺伝子情報の回収が可能な高感度PCR法のためのプライマーの設計を行った。 遺伝子データベース上に報告されているヒトB細胞のVDJ領域を網羅的に収集し、プライマー設計のための解析を行った。また、網羅的な遺伝子情報を収集するために、対象領域の下流部はB細胞遺伝子の定常領域に設定した。VDJ領域における網羅性を高めるために、V領域の上流側に存在する比較的保存性の高い領域を対象に5つのプライマーを設計した。
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