平成30年度は、ABR-DHSシステムの前段にゴム分回収用の前処理システムを、後段に窒素除去用のDHSリアクターを設置し、システム全体の最適化をおこなった。 ゴム回収を目的とした前処理システムは、平成29年度に廃水中のゴム分がDHS内で核となるゴムと接触することで凝固が促進されることが明らかとなっていたため、廃水タンク上部に核となるゴムを設置し、水中ポンプで循環させる方式を用いた。その結果、前処理によって廃水中のCOD濃度が約50%低下すると共に、ABR内におけるメタン転換率が29.4%から57.2%にまで増加していることが確認された。したがって、接触・循環方式の前処理システムを用いることで、廃水中のゴム分の凝固だけではなく、低分子化も進行することで、ABR内で分解が促進されたことが示唆された。 ABR-DHSシステムでは、ABRのCOD容積負荷 1.33 kgCOD/(m3.日)においてCOD除去率96.2%を達成し、高い有機物除去性能が確認された。一方で、DHS処理水中には150 mg/L以上のアンモニア態窒素が残存しており、硝酸および亜硝酸はほとんど残存していなかった。同DHS内からは、硝化細菌だけでなく脱窒細菌やゴム分解細菌の存在も確認されており、アンモニア酸化により生成した硝酸および亜硝酸は、ゴム分解の中間代謝物等を用いた脱窒により速やかに消費されていることが示唆された。 後段の窒素除去DHSは、ABR-DHS処理水を上部から供給し、下部に炭素源として酢酸ナトリウム溶液を供給し、無曝気で運転をおこなった。その結果、DHS上部で硝化反応が進行し、酢酸ナトリウム溶液供給後に脱窒反応が進行することで、最終処理水中の全無機態窒素濃度は30 mg/L以下にまで低下し、東南アジア地域の天然ゴム産業における排水基準を概ね達成可能な処理水質が得られた。
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