昨年度までにおいて、コンクリートなど遮蔽体の損傷(ひび割れ)に対する遮蔽性能劣化は、幅が0.5mm以上とひび割れとしてはかなり大きい際にのみ影響することが実験的に実証された。よって、本年度は、コンクリートにおける過大な損傷を制御する方法として、部材主筋の一部に形状記憶合金の一種である超弾性合金(以下、SEA)を配筋した鉄筋コンクリート(RC)梁部材を対象に、以下の2つの課題を検討した。 (1)PVA繊維補強コンクリートとの併用による損傷抑制と部材性能の改善 SEA配筋(主筋の一部代替)及びPVA繊維の有無を実験変数とした計4体のRC部材の静的載荷実験を通し、各変形角(部材角0.125~5.0%)で生じたひび割れ幅が、除荷後にどの程度閉塞されるか確認した。並びに、各パラメータが部材の強度・剛性・エネルギー吸収用など構造性能に及ぼす影響を比較した。SEAを配筋することで部材角2.0%(終局限界状態における部材変形角)まで載荷した後も除荷するのみでひび割れ幅が0.5mm未満に閉塞することを確認し、PVA繊維と併用すると閉塞率がさらに大きくなることを実証した。並びに、PVA繊維の使用がSEAを配筋した部材の剛性劣化の抑制、エネルギー吸収能向上に対し効果的に作用することを示した。 (2)せん断補強筋配筋量及び位置による損傷抑制と部材性能の改善 SEAを主筋の一部に代替したRC梁のせん断補強筋量を変数としたパラメトリックFEM解析を通し、せん断補強量が対象断面のせん断変形(せん断ひび割れ)及び部材全体の剛性劣化の抑制に及ぼす影響を定量的に検討した。並びに、基準モデルに生じたせん断ひび割れを基に仮定した力学モデルに従った集中配筋型を提案し、当モデルが部材の性能向上に効果的に作用することを示した。
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