研究課題/領域番号 |
16K18183
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 洋介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00757338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気炉酸化スラグ / 電波吸収 / 焼成 / モルタル / 準マイクロ波 / 融雪 / 発熱 / 複素比誘電率 |
研究実績の概要 |
準マイクロ波による融雪用発熱モルタルブロックシステムは産業副産物である電気炉酸化スラグ(以下、スラグという)を電波吸収・発熱材料として活用している。ただし、スラグの種類によっては、最適な調合をしても、十分な電波吸収・発熱性能を得られない。性能が十分でないスラグを加工して性能を改善できれば、十分な性能を持つスラグを安定供給できるようになる。本研究では、焼成することでスラグの電波吸収・発熱性能の改善を試みた。 (1)特定のスラグにつき、焼成前後で蛍光X線による無機元素の定性分析を行った。測定範囲内において、含まれる無機元素自体には焼成による変化は生じないと分かった。また、実験に供するスラグの成分を特定できた。さらに、焼成条件ごとにXRD測定を行い、WPPF法による定量分析を行った。スラグは焼成で結晶構造が変化すると分かった。電波吸収特性に大きく影響すると推定される鉄を含む結晶の構造変化が著しいと分かった。 (2)特定のスラグにつき、焼成条件ごとにSパラメータ測定を行った。スラグは焼成で電波吸収特性が変化すると分かった。 (3)焼成したスラグを骨材とし、焼成条件ごとにモルタル(スラグモルタルという)を作成した。 (4)スラグモルタルにつき、各焼成条件ごとにSパラメータ測定を行った。スラグモルタルもスラグのみと同様、骨材として用いたスラグの焼成条件ごと電波吸収特性が変化すると分かった。また、Sパラメータ測定で得られた値を活用して、スラグモルタルの複素比誘電率および複素比透磁率を算出した。これらを用いることで、電波吸収・発熱性能が非常に高いスラグモルタルが設計できるようになった。 (5)電波発振器からスラグモルタルに電波を伝送するための電波漏洩導波管につき、連続したスロットの幅と長さが電波漏洩量に及ぼす影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載の目標では、平成28年度実施予定分は残分がいくらか発生し、平成29年度にその残分及び電気炉酸化スラグの種類を変更した実験を行う予定としていた。 しかし、平成28年度実施予定分は全て実施され、既に十分な検討がなされている。また、平成29年度に新たに実施する内容についても着手され、計画を前倒しにして進行できている。 交付申請書に記載していなかった、本研究の発展に必要な事項2件についても研究し、成果が得られた。 (1)スラグモルタルの複素比誘電率及び複素比透磁率測定の方法を確立した。複素比誘電率及び複素比透磁率の値を用いることで、電波吸収・発熱性能が非常に高いスラグモルタルが設計できるようになった。 (2)電波発振器からスラグモルタルに電波を伝送するための電波漏洩導波管につき、連続したスロットの幅と長さが電波漏洩量に及ぼす影響を明らかにした。 よって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に算出した電気炉酸化スラグ混入モルタルの複素比誘電率及び複素比透磁率のデータを用いて、電波吸収・発熱性能の高い電気炉酸化スラグ混入モルタルを作成する。また、異なる種類のスラグを用いて電波吸収・発熱性能の向上を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
異なる種類のスラグの検討用として、フランジ及び反射板等の消耗品、同軸導波管変換器等の備品を購入する必要がある。既に発注済であり、特注品のため納品に多くの時間を要したため、次年度納品になった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年5月までに上記の物品および次年度の実験に必要な物品の費用として\2,537,308を使用する予定である。
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備考 |
研究の課題と概要が示された動画である。リンクが切れていた場合はサーチエンジンで上記タイトルを入力することで閲覧できる。
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