研究課題/領域番号 |
16K18189
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 あゆみ 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (60644995)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 接着系あと施工アンカー / 耐震補強 / 引抜き / 破壊進行メカニズム / 耐力算定 / 有限要素解析 / 超高強度繊維補強コンクリート |
研究実績の概要 |
本研究は、引張力を受ける接着系あと施工アンカーの破壊進行メカニズムを解明し、それに基づいた力学的合理性を有する接着系あと施工アンカーの引抜き耐力算定式を提案することを目的にしている。 本年度は、穿孔深さと接着材の異なる接着系あと施工アンカーの引抜き試験を行い、引抜き耐力と引抜き試験後の試験体のひび割れ状態を評価した。その結果として、コンクリートのコーン状破壊の引抜き耐力算定の精度向上には、現行の設計指針式で提案されているコーンの角度を45度一定とするのではなく、穿孔深さと反力用鋼板との位置関係で変化する角度を考慮することが有効であることを明らかにした。 また、耐久性および耐火性に優れた超高強度繊維補強コンクリートを接着系あと施工アンカーの接着材として適用した試験体を作製し引抜き耐力を評価した結果、現行のエポキシ樹脂を用いた試験体と同等の引抜き耐力が得られた。さらに、超高強度繊維補強コンクリートを接着材に用いた接着系あと施工アンカーの引抜き性状について有限要素解析を実施し、実験結果との比較からその破壊進行メカニズムについて解析的検討を行った。その結果として、コンクリートと接着材(超高強度繊維補強コンクリート)間の界面要素にせん断付着軟化を考慮した有限要素解析によって、解析結果の引抜き荷重-変位関係およびひび割れ分布は、実験結果と良い対応を示した。また、界面要素のせん断付着軟化の勾配を緩やかにすることで、引抜きを受ける接着系あと施工アンカーの最大荷重および変形性能を向上できることが解析的に示唆された。 以上より、引張力を受ける接着系あと施工アンカーの破壊進行メカニズムの解明および力学的合理性を有する接着系あと施工アンカーの引抜き耐力算定式の提案に資する有意義な結果が得られたものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、穿孔深さと接着材の異なる接着系あと施工アンカーの引抜き試験を行い、コンクリートのコーン状破壊を対象とした破壊モードの引抜き耐力算定式に関する考察をおこなった。さらに実験結果の一部について有限要素解析を実施し、実験結果との比較から接着系あと施工アンカーの破壊進行メカニズムについて解析的検討を行った。これは、当初の研究実施計画に記載した内容に概ね沿ったものであり、次年度以降の研究実施計画に支障をきたすような研究進捗状況の遅れはないものと考えている。また、本年度の研究成果の一部については、セメント・コンクリート論文集に掲載(1編)、また査読付き論文集に投稿中(1編)であり、研究成果の達成度も概ね満足できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の結果より、引張力を受ける接着系アンカーの破壊進行メカニズムに影響するのは、2つの接着面(アンカーボルトと接着材、接着材とコンクリート)の付着特性であることが分かった。平成29年度は、接着系あと施工アンカーの接着面の付着特性に関する検討を中心に進める予定である。実験としては、異形鉄筋の付着特性の評価方法を参考に付着試験を行い、接着系あと施工アンカーにおけるコンクリート-接着材界面のせん断付着応力-相対変位関係を取得するとともに接着面の付着応力、すべり量および埋込深さ方向の付着応力分布を測定する。解析としては、付着試験結果を対象に有限要素解析を行う。ここでは、接着面の界面をバネ要素モデル等にモデル化し、界面要素に試験から得られた付着応力-すべり量関係を用いることで、実験結果との比較照合を行う。また、同界面の付着特性を向上できる穿孔部の接合面の処理方法などの具体的な提案を行う予定である。
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