研究課題/領域番号 |
16K18190
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
小幡 昭彦 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (30433147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 津波荷重 / 津波波圧 / 建築構造物背面 / 水理実験 |
研究実績の概要 |
本研究では、水路実験から建物背面に回り込む津波の流速、浸水深を観察し、津波波力に及ぼす影響について検討する。通常、自由流出による水路実験では、発生させる津波は津波高さに比べて流速が速い射流となることが一般的で、流量が小さく、津波の継続時間が短い。それが建物背面へと差し掛かると背面に回り込む前に剥離し、建物背面への回り込み現象の再現を困難にする。建物背面の津波性状を観察するためには、実験時に津波が建築物背面に回り込むための十分な流量を確保し、継続時間を増やす必要がある。平成28年度の研究ではそれらの実験方法の検討を行った。まず、自作した簡易実験水路で実験を行い、建築物前面および背面における流速、浸水深の関係を整理した。その後、実験水路貯水槽を拡張し、貯水量(総流量)を大幅に増加させた実験を行い、前述の実験結果との比較を行った。 水路実験の結果より、建築物前面および背面の流速、浸水深を計測することで、建物背面の津波の基本的な性状を確認した。また、総流量を大幅に増加させた実験を行い、津波の持続時間を長くすることが可能であることが確認できた。水理実験により建築物背面に回り込む津波の性状を確認するためには、総流量を十分に確保し津波の継続時間を伸ばす必要があると考えられる。今後は建物背面に回り込んだ津波による波圧などの観察を行い、建物背面の津波性状を考慮した対津波設計の確立に有用なデータの提供を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の研究計画において、平成28年度は簡易水路実験装置を使用し仮試験を行う計画となっている。簡易水路実験装置とは、アルミ材による骨組にアクリル板を貼り付け止水した簡易な水路実験装置であり、申請者が過去の研究により作成したものである。簡易水路実験装置は、計画段階では実験における貯水量が少なく、建物の背面に回り込む津波を再現することが困難である。そのため、本研究ではこの水路実験装置に改良を施し、建物裏面に回り込む津波の性状を確認できる水路とする必要がある。平成28年度の実験では、この簡易水路実験装置の改良および建物裏面に回り込む津波の性状確認を第一の目標とする。 この仮試験については、実験手法の妥当性の検証や計測、データ整理方法の検証について次年度予定している本実験のパイロット試験的役割を持たせ、本実験で問題が生じにくいようにあらかじめ問題点をあぶり出す効果を期待している。平成28年度の水理実験では、建築物背面に回り込む津波の確認、建築物背面における津波流速、波高の計測、建築物背面に津波が回り込んだ状態での建築物に作用する津波波力の計測ができ、建築物背面に回り込む津波の大まかな性状を把握することができた。一方で、平成28年度の水理実験では、建築物背面に作用する津波波圧の計測、背面に作用する津波波圧の分布特性の観察ができず、これらの影響については今後、さらなる検討を必要とする。以上より、現在までの研究の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の水理実験では、建築物背面に回り込む津波の確認、建築物背面における津波流速、波高の計測、建築物背面に津波が回り込んだ状態での建築物に作用する津波波力の計測ができ、建築物背面に回り込む津波の大まかな性状を把握することができた。平成29年度の実験では、建物形状の影響についての検討を行う。 平成28年度に行った簡易水路実験装置における水路実験では建物形状が一通りの実験のみ行っており、建物形状における変化は観察されていない。本研究でとくに注目する津波の建物裏面への回り込みについては、建物形状(特に建物平面形状、津波進行方向に関してのアスペクト比)が大きくかかわっていると考えられる。平成29年度の研究では、建物形状を変化させることで裏面に回り込む津波の津波高さ、裏面の波圧の変化を観察し、その傾向を把握する。実験は平成28年度から引き続き簡易水路実験装置により行い、建築物背面に回り込む津波の確認、建築物背面における津波流速、波高の計測、建築物背面に津波が回り込んだ状態での建築物に作用する津波波力の計測を行う。これにより、建築物背面に回り込む津波の大まかな性状を把握することができると考えている。
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