本研究では、水路実験から建物背面に回り込む津波の流速、浸水深を観察し、津波波力に及ぼす影響について検討する。通常、自由流出による水路実験では、発生させる津波は津波高さに比べて流速が速い射流となることが一般的で、流量が小さく、津波の継続時間が短い。それが建物背面へと差し掛かると背面に回り込む前に剥離し、建物背面への回り込み現象の再現を困難にする。建物背面の津波性状を観察するためには、実験時に津波が建築物背面に回り込むための十分な流量を確保し、継続時間を増やす必要がある。 平成29年度までの簡易水路実験装置における水路実験では、建築物前面および背面の流速、浸水深を計測することで、建物背面の津波の基本的な性状を確認した。また,建物形状を変化させることで裏面に回り込む津波の津波高さ、裏面の波圧の変化を観察し、その傾向を把握した。この実験から、建物形状については津波方向に対して建物幅が大きく影響を及ぼし、建物奥行きについては影響が少ないことが分かっている。平成30年度は水路実験の本実験を秋田工業高等専門学校環境都市工学科の実験水路を使用し行った。本実験では,これまでの簡易水路実験装置における実験と同様に,建築物前面および背面の流速、浸水深,波力の計測を行っている。その結果によると,建物に作用する波力は建物前面の流速から得られる動圧による水平力と建物前面および背面の浸水深の差によって生じる水平力の和として説明できることが分かった。また,本実験で特に注目するパラメータは建築物前面および背面の波圧で,小型圧力センサーを使用し計測を行った。その結果,大まかな建築物前面および背面の波圧の傾向を把握することができた。
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