研究課題/領域番号 |
16K18197
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
有波 裕貴 新潟大学, 自然科学系, 特任助教 (30768867)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 粒子画像流速測定法 / 実大模型 / 流れの可視化 / 室内気流性状 |
研究実績の概要 |
平成28年度はLarge Scale PIVシステム(LSPIV)を構築する上で、重要な良好な可視化画像の取得方法に関して、1.トレーサー粒子の選定及び発生方法、2.レーザーライトシートの配置方法、3.可視化画像の撮影方法の検討を行った。床面積12.15[m2]のダイニングキッチンを再現した実大模型を対象とし、実大模型内にはエアコン、テーブル、椅子、常時換気口、ドアにアンダーカットを設ける。厨房はペニンシュラ型とし、IHレンジ上部には、整流板を有するフラット型レンジフードを設置する。IHヒーター1口で鍋を加熱し、鍋の水が沸騰した状態を保つ。レンジフード排気量はレンジフードから一定の風量となるよう排気用シロッコファンをインバータで制御する。給気はレンジフード排気量と同じ風量に制御する。可視化対象領域は鍋中心の鉛直断面とし、3[W]レーザ2台を可視化対象領域全体に照射し、1[W]と2[W]のレーザを相対的に暗い部分に照射することで輝度分布を均一にする。可視化に用いるトレーサには難燃性のスモーク(DAINICHI PORTA SMOKE PS-2002、粒径: 数10[μm])を使用し、シーディングを行う。 実大室内空間を対象に室内気流性状の測定を行い、1m角以上の測定範囲において、時間的・空間的に連続な気流速度分布を測定した。鍋上の上昇気流はアンダーカットからの給気により生じる調理台上をダイニング側からキッチン側へ向かう水平方向の0.25[m/s]程度の気流によって偏流され、レンジフードに捕集される前にキッチン側へ漏出する気流性状が明らかとなった。同様のモデルを数値流体解析(CFD)で再現し解析を行い、PIV測定結果と比較し、両者の気流性状が一致することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熱上昇気流と空調気流が混在する実大室内空間を対象にLSPIVシステムの検討を行い、1m角以上の測定範囲において比較的均一に可視化を行うことが可能なトレーサ、レーザ配置、撮影機材の検討し、実大室内空間を対象に気流性状の測定を行うことができた。実際の室内空間には様々な家具が存在し、可視化の際にレーザの影となり、粒子画像の撮影が困難となる問題が生じるが、複数台のレーザを用いることにより、広範囲を均一な輝度分布として可視化を行う方法を確立した。レーザが重なり合うことによって、輝度値の離散的な変化による画像解析への影響が懸念されたが、画像解析結果への影響は概ね確認されず、単体のレーザと同様の解析方法により、解析を行うことが可能であることが明らかとなった。H28年度はこれらの検討に加え、床から天井までの範囲(3m角)を可視化、撮影する方法へ展開させる予定であったが、トレーサの供給方法、濃度分布の撮影方法に課題が残り、測定範囲を拡大するに至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度はトレーサの供給方法に課題が残り、当初目標としていた3m角の範囲をPIV測定するに至らなかった。H29年度は、ダクト型トレーサ供給ノズルを新たに作成し、測定範囲の拡大方法の検討を行う。更に、移動体(人体、扉)周りやペリメータの空気流動現象、吹出角度を時間的に変化させた場合の空調機吸込口・吹出口周りのショートサーキット現象等のPIV測定を行う。模型実験では困難なコールドドラフト現象や移動物体周りの風速分布の測定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、本研究で使用する実大室内空間の模型を独自に作成する予定であったが、研究代表者が所属する研究室で、他の研究により実大の住宅厨房模型を作成することとなったため、これを借用し、そこに可視化実験用器材を加えてLSPIVシステムの実験を行うこととした。そのため、厨房模型の完成を待って研究計画を進めたため、研究計画にやや遅れが生じており、未使用額が発生した。なお、研究代表者が所属する機関の実験室スペースには限りがあり、本研究用の実大室内模型を別途作成することは不可能である。
|
次年度使用額の使用計画 |
3m角を対象とした室内空間PIV測定を行う方法の検討を行う。更に移動体周りの測定を行い、室内気流構造の解明を行う。研究成果は国際会議において発表を行う予定である。未使用額は主に物品費と旅費に充てることを予定している。
|