研究課題/領域番号 |
16K18199
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研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
野秋 政希 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 研究員(移行) (90535478)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 散水 / スプリンクラー / 内装 / 壁 / 燃え拡がり / 火炎伝播 / 燃焼 / 発熱速度 |
研究実績の概要 |
本研究では、スプリンクラー等の散水設備による可燃物の燃え拡がり抑制効果の影響を考慮した建築物の火災安全性の工学的評価手法の構築を目的とし、「i)散水による燃焼中の可燃物から隣接する可燃物への着火の抑制」および「ii)木材などの可燃性内装材の燃え拡がりの抑制」に関する定量的知見の収集のため、H28年度は以下の実験を実施した。 i) 散水による燃焼中の可燃物から隣接する可燃物への着火の抑制 電熱ヒーターおよび散水設備を用いて、可燃物(PMMA(アクリル板))に対し、加熱と散水を同時に与える実験を実施した。主な実験パラメータは「加熱強度」と「散水密度」とし、可燃物が熱分解を開始した時間、着火した時間、表面温度等を計測した。実験の結果、加熱強度が低く、散水密度が高い条件では、可燃物が熱分解しない条件も存在した。一方、加熱強度が低く、散水密度が高い条件では、可燃物表面に供給された水が瞬時蒸発し、温度上昇が緩やかとなるものの熱分解や着火が生じた。このとき、加熱強度が高く、散水密度が低いほど、可燃物が熱分解を開始した時間や着火した時間は早くなる傾向を示した。 ii) 木材などの可燃性内装材の燃え拡がりの抑制 鉛直に立てた可燃性壁内装材(PMMA(アクリル板))を下端から幅方向に一斉に点火し、上方へ燃え拡がっている間に内装材全面に散水し火炎伝播性状の変化を確認する実験を実施した。主な実験パラメータは「散水密度」である。実験の結果、本実験で採用した散水密度の範囲では、散水開始以降も燃焼が継続し続けたものの、燃え拡がり速度は散水無しの条件に比べ幾分低くなる傾向を示した。また、燃え拡がり速度は散水密度が高くなるほど遅くなった。さらに、燃え拡がり性状に関する基礎的な燃焼特性を把握するため、小規模な可燃物片(木材、PMMA、ウレタン)を用いたコーンカロリーメータ実験を併せて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に示した内容は、科研費申請時の応募内容ファイルに示したH28年度の研究計画の内容とおおむね等しいため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で着目した以下の二つの課題に対し、それぞれ以下のような研究を行う計画である。なお、記載の内容は科研費申請時の応募内容ファイルに示した内容とおおむね等しい。 i) 散水による燃焼中の可燃物から隣接する可燃物への着火の抑制 平成28年度に実施した実験の結果を用いて、散水による可燃物の着火抑制を分析する。特に火災安全工学の分野では,火熱により上昇した可燃物表面の温度が着火温度に到達した時点を以って可燃物の着火と見なす熱着火モデルを用いて検討することが一般的であり、本研究では、散水による可燃物の冷却効果等を考慮した熱着火モデルを構築する計画である。また、必要に応じて補足的な実験を実施する。 ii) 木材などの可燃性内装材の燃え拡がりの抑制 平成28年度に実施した実験の結果を用いて、散水による可燃性内装材の火炎伝播抑制効果を分析する。申請者らはすでに平板状の鉛直面を対象とした理論的なモデルを構築しており、まずはそのモデルを用いた計算結果と実験結果の比較を行い、必要に応じてモデルの改良や補足実験を実施する計画である。 また,平成29年度の後半にはこれらのモデル等を用いて,散水設備による可燃物の燃え拡がり抑制効果を考慮したケーススタディを実施し,散水設備の有無による火災性状の違い等について検討する計画である。
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