研究課題/領域番号 |
16K18201
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
上川 大輔 国立研究開発法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (30409651)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 木材の熱分解 / 赤熱燃焼 |
研究実績の概要 |
木材の熱分解時の吸発熱性状を把握することを目的に、円柱型の木材サンプルを木材の発火温度以下の一定温度にて加熱する実験を実施した。スギ、カラマツからなる直径50mm、繊維方向長さ100mmの円柱形の試験体を用い、絶乾、気乾の各含水状態としたもの、および絶乾とした後に空隙内を窒素置換したもの(-0.092MPaに減圧後窒素を注入)をサンプルとした。サンプル断面中央、表面、それらの中間(表面より12.5mm)にて温度推移を計測した。加熱にはマッフル炉を用い、窒素雰囲気下(流量7.5L/min)にて常温から所定の温度(250℃~350℃)まで昇温したのち一定温度に保持する加熱条件とした。 その結果、上限温度300℃以上の条件において、試験体内部の温度は、300℃を超える付近より急激に温度が上昇し、数分後のピークでは表面の温度を100℃ほど上回る状況を確認した。中央ほど高温となっていること、加温温度250℃ではこのような内部温度の逆転は見られないことから、これは250℃以上で顕著となる熱分解反応による内部での発熱を示唆している。また、窒素置換のサンプルでも発熱が見られることなどから、低酸素雰囲気においても木材内部での熱分解が発熱側であることが示唆された。 炭化物の燃焼性状(発熱速度など)と風速や加熱条件との関係を明らかにするためのコーンカロリー試験機を用いる実験に関して、被加熱中のサンプル表面に送風するための、送風ファンの付いたステンレス製ダクトを作製した。ファンへの供給電力をコントロールしサンプル表面の風速を制御できる仕様とし、各条件ごとの実験に供するために、供給電圧とサンプル表面での風速分布の関係など、次年度以降の当該試験に向けた基礎条件を整備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーンカロリーメーターによる木材の熱分解時熱収支の計測に関して、実験装置の校正用ガス配管系統の補修に時間が掛かったことにより、研究の進捗にやや遅れが生じたが、当該遅延については、装置改修が一応完了したことから平成29年度内に対処可能である。 その他の事項については計画通りの進捗となっていることから、おおむね順調に進捗していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
木材の熱分解時熱収支について、コーンカロリーメーターによる計測を実施し、過去の情報との差異や実験方法そのものの妥当性を検証する。また、H28年度に整備した、一定風速下でのコーンカロリーメーター試験法により、木材等の炭化物の赤熱燃焼と風速等との関係を計測する他、申請時の研究計画に従い熱分析などを進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
小型板状のサンプルの燃焼性状を把握する試験に用いるコーンカロリーメーターに関して、一部補修の必要が生じ、同装置を用いた実験に遅延が生じている。本来購入予定であった、これら実験にて用いる計測機器や治具などの一部は、実際に実験しながら形状や計測レンジ等を決める必要があるため、これらの購入を保留している。そのため当該実験に係る予算の一部に次年度使用額が生じることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
遅延している上記コーンカロリーメーターを使用した実験をH29年度に実施する予定であり、次年度使用額はその際に使用する計測機器(熱流センサー類)及び試験体のホルダー用治具などに使用する。
|