コーンカロリーメーターによる加熱燃焼実験および小型耐火炉試験により、木材の有炎・赤熱燃焼時それぞれの熱収支検証データを得た。木材の熱分解時の吸発熱性状を把握することを目的に、木材サンプルを発火温度以下の一定温度にて加熱する実験を実施した結果、低酸素雰囲気においても木材内部での熱分解が発熱側であることが示唆された。炭化物の燃焼性状と風速や加熱条件との関係に関して、送風ファンの付いたステンレス製ダクトをコーンカロリーメーター燃焼室内に設置した実験装置での計測を行った。その結果、5mまでの有風下における、無処理及び難燃薬剤処理スギ炭化物の赤熱燃焼性状と風速・加熱強度等との関係を明らかにし、それらより、風速による対流熱伝達率の変化と、酸素との接触機会の増大による発熱速度の上昇との関係を検討した。また、難燃処理スギの炭化物においては、炭化物の収縮に伴う亀裂内での赤熱燃焼が顕著になる現象が見られ、これは耐火集成材での燃え止まりが阻害される原因と考えられた。コーンカロリー試験での燃焼の再現・予測を目的として、炭化物が加熱を受けた状態で赤熱燃焼する状況を熱伝導解析により計算する厚さ方向の一次元計算モデルを構築した。モデルでは、炭化物を厚さ方向に細分化し、微小時間での境界領域での外部との熱移動と酸化発熱、各領域間での熱伝導を計算している。無処理木材の炭化物についてはおおむね数値計算による再現ができたものの、難燃処理木材の炭化物の有風下の赤熱燃焼では、割れ内部での赤熱を考慮しない一次元モデルでの燃焼シミュレーションそのままでは、燃え止まりの予測が難しいことが示唆された。 これら検証から得られた情報は、火災時の木質部材の耐火性能に関する数値解析にて、計算モデルの設定値や関数として組み込まれるべき重要な情報に繋がるものであり、今後より正確な予測を行うために利用されることが見込まれる。
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