住み慣れた地域で最期まで暮らすためには、その地域の特性に配慮しつつ、24時間365日いざという時に対応可能な、介護サービスや生活支援サービスの供給体制を構築していかなければならない。本研究は、基礎自治体、地区医師会、介護事業所等の協力をえて、地域包括ケアシステムにかかる拠点整備手法論の構築を目指すことが目的である。 当初拠点整備手法論の開発は、日常生活圏域を基本単位として、需要側である高齢当事者の生活ニーズに着目した需要推計モデルを開発、各種介護・生活支援サービス需要を推計、拠点整備の原単位を明らかにしていくことを想定した。 ところが地方中核都市A市の介護保険給付費データと住基データを統合し分析したところ、訪問型サービスの日常生活圏域内充足率は10%~40.1%と半数も充足していない。通所サービスの分析では住民側のニーズも日常生活圏域内で収まらない。またこの需要側の推計モデルを用いて地方小規模都市C市を分析すると、2030年に単身高齢者で認知症自立度Ⅱ以上の方が約350名、約40ユニットの整備が必要となるが、介護人材不足で実現不可能である。つまり日常生活圏単位・需要側に着目したモデルは理論上推計は可能だが、当事者のニーズに合わず、また整備の実現可能性が低いという知見が得られた。 そこで、さらにサービス供給側に着目、都心D区で24時間365日介護サービスを行う事業者の協力を得て、要介護3以上の方で24時間対応が必要な高齢者へのケアプラン・サービス供給分析、また地方小規模都市E市・F市において、地区医師会の協力を得て在宅医療の供給状況に関するアンケート調査を実施した。 本研究の結果、既存のサービス利用状況は、実際には供給側の論理、特に医療介護人材の確保が大きく影響する。住民の生活ニーズが多段階多重圏域構成であり、この上で特に生活支援サービスを供給していく拠点整備モデルを構築した。
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