平成30年度は、前年度までの現地調査の補足として米国デトロイト市の最新の自治体の戦略について調査を実施した。連担した空き地を活用した地区スケールの改善事業や、都市農業を中心とした大規模な土地利用転換事業の実態を調査し、本研究が目的の一つとして掲げていた「地区スケールの再生計画技法」についての手法を検討した。また、従来の人口減少都市の低未利用地として想定していた、工場跡地および戸建て住宅地以外の低未利用地マネジメント事例として、人口減少が著しい長屋(Row House)を大量に抱えるフィラデルフィア市北部の調査も実施した。同市は、現在人口減少から増加に市全体の人口動態が変化しているが、その際の空き地マネジメントの有効性を検討することができた。 本研究の最終年度として、これまでの研究成果の公表にも力点をおいた。低未利用化した工場跡地の再生に関する知見は、「米国のブラウンフィールド再生」として九州大学出版会より出版した。また、2018年6月に東京大学にてマサチューセッツ工科大学から米国の人口減少都市のアーバンデザインの第一人者であるBrent D. Ryan准教授をキーノート・スピーカー、韓国・慶北大学校Cheol Jae Yoon准教授および中国・清華大学博士課程のGao Shuqi氏、東京大学・村山顕人准教授および矢吹剣一特任研究員を発表者に迎え「人口減少都市シンポジウム2019」を国際シンポジウムとして開催した。本研究が目的とする「多様な低未利用地の再生を統合的に構想する手法とその効果」について、米国を中心的な話題としつつ東アジア諸国の実態も踏まえた議論を行うことができた。
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