大都市圏都心部では、近年ヒートアイランド現象、集中豪雨に伴う土砂災害・内水氾濫被害、地震・津波等の大規模災害の発生といった環境問題が顕在化している。その中で、土地の自然立地的特性を読み解き、緑地の多面的機能を活かしながら自然共生型の都市空間を形成することは、21世紀の根幹的な課題である。しかしながら、人口縮退時代に突入し、基礎自治体の財政難や少子高齢化による緑地管理の担い手減少に伴い、緑地の減少や質的劣化が生じてきている。本研究は、人口構成の動態を踏まえ、緑地の量・質の双方から多面的機能(サービス)と管理コストを適切に評価・配分する緑地計画手法論を構築することを目的としたものである。本年度の得られた成果としては、(3)マトリクス類型別サービス、(4)管理コストの指標設定に関して、具体の対象地である三重県松阪市朝見地区を対象に、水田における生物多様性と個人農家・法人農家等の多様な管理主体による管理作業量を明らかとし、両者をバランスさせながら地域の持続可能な管理シナリオを提案した調査研究成果について取りまとめた。以上の成果は、令和2年度日本造園学会論文(ランドスケープ研究)に投稿し、採択された。また、(5)将来人口予測に基づくサービスと管理コストの適正配分による緑地計画手法の構築に関しては、愛知県北名古屋市を対象とし、都市農地への多様な利用者のアクセシビリティと農地所有者の利用意向アンケート調査を行い、需要と共有のマッチングについて、GIS分析を行った。その成果は、日本造園学会全国大会、アジア・オセアニア研究協力機構シンポジウム、グリーンインフラ・都市農業国際ワークショップにおいても発表し、議論を展開した。
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