平成30年度は、28、29年度に事例調査を通じて捉えてきた共用空間の機能について考察を行った。さらにその機能について検討するため、全国のユニット型児童養護施設を対象とした追加調査を行った。なお本研究で「共用空間」とは、ユニット型施設において食事や就寝を行う空間を「ホーム空間」とした時に、ホーム空間の外にある、子どもと職員がホームの枠を超えて共用で利用する空間を指すものとする。 まず、共用空間がどう利用され、また利用者にどのように認識されているかに関する3施設の事例調査より、寝食といった生活上の必須行為を行うホーム空間に対して、共用空間の機能は以下のものであると考えられた。それは、ホーム空間の補完、子どもへの個別支援、集団活動・グループワーク、職員の連携、職員の休憩、といったものである。 次に、上記の結果について検討すべく、全国の257施設を対象にアンケート調査を実施した(回収率59.1%)。その結果、全国的には共用空間は集団活動と職員の休憩に使われる傾向はあるものの、利用実態には施設差が大きいことが分かった。また、共用空間をどの程度活用するかの意向については、日常生活において積極的に活用する施設は約35%、集団活動や生活の一部で活用する施設は約55%であり、活用に消極的な施設は約10%と少数であることが分かった。また共用空間は、ホーム空間の外にある選択性を備えた場としての役割が期待されているものの、そこを活用する上では管理が難しく、子ども間のトラブルが懸念されていることも把握された。 共用空間の計画のあり方については、事例調査より、子ども達が自由に使用できる空間と管理部門がおかれた空間との配置や連結の方法、個別対応の場と生活動線との連結の方法といった課題が見えてきた段階であり、今後の更なる研究が必要である。
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