研究実績の概要 |
これまでのランダム樹木配置シミュレーションは、樹形を1種類に限定したうえで配置数を変化させ、緑視率の分布様態がどのように変化するかについて検討してきた。令和元年度はこれまでの検討をさらに展開し、大小12種類の樹木を想定したうえで50 m× 50m の敷地に対して緑被率が約20% となる本数を求め、これに従ってランダム樹木配置モデルを作成した。樹木形状ごとに300ずつの樹木配置モデルを作成し、緑視率計算を行った。計3,600 のサンプルモデルによる十分な試行回数を確保することでき、統計的な一般性を確保しつつ全方位緑視率の期待値や分布形態について樹木形状およびその配置数との間の数理的な関係性を分析・考察することができた。主な知見を以下に示す。 1) 12 種類の樹木形状について、それらを50m 四方の敷地にランダムに配置した場合の全方位緑視率の期待値をそれぞれ明示した。2) 12 種類の樹木形状による各300 モデルの平均緑視率の標準偏差はいずれも小さく、全方位緑視率の期待値は高い信頼性を担保できている。3) 全方位緑視率の期待値は、配置される樹木の断面形状に関わらず樹木配置数を変数とした対数近似の回帰式に非常に当てはまりよく回帰することを明らかにした。4)12 種類のランダム樹木配置モデルの緑視率のヒストグラムを示した。緑視率の分布は樹冠高h や地面から樹冠最下部までの高さが低いほど多様に、高いほど均一になる。 以上の研究成果は、「GPGPUを用いた交差判定式全方位可視率計算の超高速化-緑視率計算と植栽計画指標検討への応用-」(藤井健史・山田悟史,日本建築学会技術報告集,第26巻,第63号,pp.802-807 ,2020年6月,日本建築学会)への掲載が決定している。
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