研究課題/領域番号 |
16K18215
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
丹羽 由佳理 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (80586751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 減災 / アンケート / シニア / 外出行動 / 災害耐性 |
研究実績の概要 |
アクティブシニアという言葉に代表されるように、シニア世代であっても災害時に地域の防災・減災活動に役立つ人がいるはずである。シニア世代を一括に「被救助者」としてまとめるのではなく、「自助可能」さらに「共助可能」と分類できるよう、シニア世代についての外出行動に関する調査が必要である。 本研究課題は、シニア世代の減災ポテンシャルを定量的に評価し、シニアが活躍できる都市の災害耐性を検証することを目的としている。減災ポテンシャルの算出及び都市の災害耐性を評価することにより、少子高齢社会における減災まちづくりを推進することを目指している。 平成28年度は、本研究計画に従い、ステップ1 「避難所・避難一時立ち寄り施設のネットワークボロノイ」作成に向けた資料の収集を行った。またステップ2 「シニア世代の外出行動調査」に向けて、様々な世代の防災意識を把握するためのアンケート調査を実施した。 アンケート調査は、東京都大田区にある2つの地区(南雪谷地区、西蒲田地区)を対象として、2016年12月に実施した。アンケートの回収率は8.9%で、合計714(南雪谷地区355、西蒲田地区359)の回答を得た。 アンケート調査を分析した結果、防災に対する意識や備えに関しては、居住地区による有意差は見られなかった。また「避難場所の認知」には、避難場所までの経路を歩いた経験差や、区の防災に対する取り組みの認知差が強く関係していることが分かった。年代で比較すると「70代以上」は避難場所を認知している傾向が強く、世帯で比較すると「単身世帯」は避難場所を認知していないが、「夫婦+子世帯」は認知していることが分かった。アンケート調査の分析結果は、Asian-Pacific Planning Societies 2017国際会議にて口頭発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステップ1 「避難所・避難一時立ち寄り施設のネットワークボロノイ」作成に向けた資料の収集が完了しており、ネットワークデータの構築に向けた作業へ移行することができる。また様々な世代を対象にしたアンケート調査は、居住地区、世帯、年代による防災への意識・備えの傾向を把握できている。分析結果は、Asian-Pacific Planning Societies 2017国際会議にて口頭発表する予定である。 ステップ2 「シニア世代の外出行動調査」の一部は完了しているものの、数日間の外出行動調査を実施するための協力者については調査計画の練り直しが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度(進捗状況)をふまえ、今後の推進方策を若干修正することとした。これまでの予備調査から、数日間の外出行動調査に向けたシニア協力者の確保が難しいと分かったため、ステップ2 「シニア世代の外出行動調査」のなかに、ステップ3 「避難行動実験」を包括することとする。 平成29年度は、ステップ2とステップ3の調査・実験を同時に実施することにより、4つの指標(指標1.生活範囲と防災拠点との関係、指標2.地域の防災拠点・避難所に関する知識・利用率、指標3.体力・技能、指標4.防災意識)から分析を行う予定である。同時に、ステップ4 「都市の災害耐性分布の可視化」へ向けたデータ整備に注力する。 平成29年8月には、本研究課題の第一報としてAsian-Pacific Planning Societies 2017国際会議にて口頭発表し、今年度実施する調査・実験については、日本都市計画学会一般論文へ投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ステップ1 「避難所・避難一時立ち寄り施設のネットワークボロノイ」作成に用いる、解析用パソコン及びArc GISアプリケーションソフトを申告していたが、Arc GISアプリケーションソフトの代替としてQGISを利用して避難場所をプロットしたため使用計画と異なる額となった。QGISはオープンソースのソフトウェアであり、ArcGISに近い機能・操作性を備えていることから、避難場所のプロット等の作業には適していると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、到達圏分析やネットワークボロノイなど高度なネットワーク分析を計画しているため、Arc GISアプリケーションソフトを用いて分析を行う予定である。また、調査協力者への謝金及び調査で使用する機器に予算を用いる計画である。さらに、Asian-Pacific Planning Societies 2017国際会議への参加費・移動費として予算を用いる。
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