研究課題/領域番号 |
16K18217
|
研究機関 | 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター) |
研究代表者 |
藤井 皓介 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), その他部局等, 研究官 (10759575)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 避難行動 / 消防活動 / 群集 / 高層建築物 / 火災 |
研究実績の概要 |
東京都内に存在し多数の在館者を擁する25階建て高層オフィスビルで年に1回実施されている全館避難訓練を調査した。具体的には、避難時の経路となる階段室、階段附室、避難階の屋外および屋外に通じる経路における避難行動に着目し、ビデオカメラ撮影等を通じて、避難時間、歩行速度、流動係数、滞留状況の調査を行った。特に、全ての避難者が集中する階段室内は混雑と滞留が生じることが予想されたため、全ての階の階段室内について天井付近から階段内の様子を撮影するとともに、避難者集団の中に各階1~2名の観測者を加えることで避難者の歩行状況を調査した。特に混雑が生じていた階段室内の混雑および滞留状況の実態を把握し、滞留の発生メカニズムを解析した。 消防機関や自衛消防組織等の消防活動実施者による避難時における活動の現状を把握するため、関連法規の整理と実際の活動状況に関するヒアリング調査を行った。 (1)避難時における消防活動に関連する法規の整理:消防法のうち、施設内における災害対応に関する消防活動の法規を整理することで、避難中における消防活動の避難計画に対する位置付けおよび建築基準法の避難計画との齟齬を明確化し、ヒアリング調査の項目に反映した。 (2)実際の避難状況下における消防活動実態の調査:大規模施設が集中する全国主要都市圏に存在する5箇所の消防本部を対象に、大規模施設における現地到着後の消防活動実態についてヒアリング調査を行い、避難時の混雑状況下における活動想定の有無と想定している活動内容について把握した。これらをデータベースとして整理した結果、混雑状況における階段の移動や非常用EVの活用、自衛消防組織への避難誘導の委任などの複数事項について、消防本部によりばらつきが見られる結果となった。全国的に同様に行うと考えていた上記活動について、一部消防本部に基づくものだが消防本部によって異なることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い、本年度は高層建築物の避難訓練調査と避難時の消防活動実態把握のための関連法規の整理とヒアリング調査を実施した。具体的には、実際の高層建築物で行われた避難訓練における避難行動の観測調査を行い、このデータを基に滞留メカニズムについて分析した。また、関連法規の整理とヒアリング調査に基づき避難時の混雑状況下における活動想定の有無と想定している活動内容について把握した。なお、ヒアリング調査は実際に大都市圏の地区を所管する消防本部を訪問して行った。このように、研究は計画に従い、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、実大規模の空間における避難者と消防活動実施者の行動を想定した群集避難実験を行う。混雑状況下における両者の移動状況をビデオカメラ等で記録し、これを解析することで避難時間の遅延およびその発生要因、避難群集と消防活動実施者間の対応行動を明らかにする。今年度の調査より、避難時の混雑状況下の階段における消防隊の移動に課題があることや一般的な消防隊の活動方法など、実験想定等に役立つ情報を得ることができた。実験想定や分析の際に必要な情報に不足がある場合は、引き続き消防活動について調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に対して、調査旅程が効率化できたことにより旅費の執行が下回ったため旅費に残額が生じた。次年度の消防活動調査に使用する。また、今年度の調査により実験条件の増加が見込まれ、実験データ取得のためには機器や人員等の研究体制について拡充が必要となる可能性が高い。物品費・人件費等研究費の残額を実験の実施や分析のために利用することを予定している。
|
次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、群集実験の実施に際して、消防活動調査および実験データ取得のための機器や人員等の研究体制の充実により有用な結果が得られることが想定されることから、これら実験の実施ならびに分析のための費用として使用する予定である。
|