平成29年度までにおいて資料調査が未実施であった6県(岩手県、長野県、和歌山県、香川県、長崎県、宮崎県)ならびに北海道立文書館で引き続き調査を実施した。公文書館が整備されておらず調査が出来なかった県が一部にあったが、47都道府県全てで地方高官官舎の資料調査を実施し、管見の及ぶ限りで政府高官官舎・地方高官官舎を網羅して事例を収集することが出来た。加えて旧新潟県知事官舎、旧長野県知事官舎、旧石川県警察部長官舎など地方高官官舎の現存遺構について現地視察も並行して実施した。これにより資料調査からでは得難い平面構成や建築仕様などを理解でき、本研究課題の進展に資するものとなった。 これらの取り組みにより得られた基礎資料から「和洋館並列型住宅」について分析・考察を行い、研究成果を『政府高官官舎・地方高官官舎に見る「和洋館並列型住宅」の成立と展開に関する研究』として報告書をまとめ、本研究課題について総括した。また、関連する研究として「「和洋館並列型住宅」における和館の接客空間の発生について-内大臣官舎(明治26年)を事例に-」(日本生活学会第45回研究発表会)、「政府高官官舎・地方高官官舎の「和洋館並列型住宅」にみる特質と差異について」(共著:佐藤秀明、日本建築学会関東支部研究発表)の研究発表を行った。さらに平成29年度に発表を行った「明治初期の山口尚芳邸について」(日本生活文化史学会大会)を大幅に加筆・修正した「明治時代初期の山口尚芳邸について 政府高官私邸に見る洋風住宅の導入と内閣総理大臣官舎への転用」が審査の結果、『生活文化史』第74号に掲載された。
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