本研究では、大江スミがイギリス留学で修得した住居衛生論について明らかにするため、イギリス国内のアーカイブにおいて、当時の衛生論と留学先のカリキュラムについての文献調査を実施し、住宅遺構の視察を含めて検討を行った。国内の動向については、大日本私立婦人衛生会機関誌の分析から言論の傾向を明らかにし、スミが展開した住居衛生論は、イギリス衛生の情報を含みつつ、日本の実情に合わせたものであったことを明らかにした。 住宅の近代化は、伝染病対策を契機に衛生の改良を主要課題としており、日本でも同様の背景から住居衛生の改良が急務となったのである。本研究の成果は、こうした歴史についての重要な知見となると考えられる。
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