研究課題/領域番号 |
16K18230
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡田 周祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 磁性粉末冶金研究センター, 研究員 (90712480)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Sm-Fe-N / 磁石 / 希土類磁石 / 溶融塩 |
研究実績の概要 |
Sm2Fe17N3磁石はネオジム磁石同等の磁化を有しつつ、非常に大きな磁気異方性を有していることから、有望な磁石材料である。永久磁石粉末の保磁力は粉末の平均粒径に強く依存することが知られている。我々はこれまでに還元拡散温度の低温化により粒径を微細化することで高保磁力な磁石粉末を作製してきており、平均粒径を約0.6μmまで微細化することで保磁力22.8 kOeを達成している。 一方で、還元剤として使用するカルシウムの融点は約850℃であることから、従来方法では還元拡散温度のこれ以上の低温化は難しく、さらなる粒径の微細化と高保磁力化に向けては新たな方法が必要である。そこで本研究では溶融塩を用いてカルシウムの反応系中への拡散を促進することで低温化を検討している。予備検討として溶融塩を用いて還元拡散を検討したところ、Sm2Fe17微粒子は得られたが、粒子同士が強く焼結してしまうことが課題であることが分かった。よって、昨年度は還元拡散反応過程において焼結が起こってしまう原因の調査と対策方法について検討を行った。 結果、還元拡散反応においてカルシウムで還元されたサマリウムが鉄粒子に拡散していくことでSm2Fe17粒子が形成されることが明らかとなり、原料の鉄粒子のサイズが1ミクロン程であり目的のSm2Fe17N3粒子サイズよりも大きいことが、焼結の原因であることが分かった。そこで、新規に約0.1μmの鉄微粒子粉末の合成方法を開発した。次年度は開発した鉄微粒子粉末と酸化サマリウムの複合化を行い、溶融塩を用いた還元拡散法を適用することで、これまでにない単磁区サイズ(0.3μm程度)のSm2Fe17N3微粉末の開発と高保磁力発現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は計画に沿って焼結の原因の調査を行い、焼結の原因が原料の鉄微粒子のサイズであることを突き止めた。そこで、目的とする0.3μm程度のSm2Fe17N3を作製することを念頭に微細な鉄微粒子の作製方法について検討を行った。具体的には粒子径が0.1~0.2μm程度であること、カーボンの混入はSm2Fe17N3に対し磁気性能の低下を招く可能性があることから有機配位子は用いないこと、を条件とし開発を行った。結果、硝酸カルシウム添加した水熱合成法により炭酸カルシウムで被覆されたヘマタイト微粒子を作製し、これを水素還元することで粒子径が0.1μm程の鉄微粒子を作製できることを見出した。次年度の計画に移行する上で障害もない事から、「おおむね順調に進展している」との自己評価をくだした。
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今後の研究の推進方策 |
作製した鉄微粒子とサマリウム塩もしくは酸化サマリウムとの複合化方法を開発し、これに溶融塩を用いた低温還元拡散を適用することで微細なSm2Fe17N3の作製と高保磁力発現を検討する。溶融塩種類を変え、さらに低温化することで一層の微細化による高保磁力化を検討するとともに、理論単磁区サイズ(約0.3μm)付近での保磁力の粒径依存性を明らかにすることを目指す。
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