本研究では理論単磁区サイズのSm2Fe17N3微粉末を作製し、現作製プロセスで可能と考えられる保磁力の最大値を明らかにすることを目的にしている。昨年度までの研究でより微細な粉末を作製するためには、目的サイズよりも微細なFe粒子を用いる必要があることがわかり、焼結防止剤がコーティングされた酸化鉄微粒子を新規に開発し、これを水素還元することで微細なFe粒子の合成法を開発した。今年度はこの粉末を用い、溶融塩を用いて、これまでにないカルシウム融点(850℃)以下の温度での還元拡散反応を検討した。 約100nm程度のFe粒子と酸化サマリウム粉末、カルシウム、溶融塩として塩化リチウムを混合し、鉄るつぼに入れ、高周波炉を用いてるつぼ内温度が750℃になるようにして熱処理をおこなった。結果、目的とする、理論単磁区臨界径である約300nmのSm2Fe17粒子を得ることが出来た。同条件にて塩化リチウムを加えずに反応を行ったところ、X線回折法において、微少なSm2Fe17相ピークと未反応のFe相しか確認出来なかったことから、塩化リチウム溶融塩が還元拡散反応を促進していることが明らかとなった。カルシウムが溶融塩中に溶解することでカルシウムと酸化サマリウムとの接触が促進されたことで還元拡散反応が起こったものと考えている。 一方で課題として、目的サイズのSm2Fe17相微粒子は得られるものの多量のFe相も残存してしまうことがわかった。そこで、サマリウム源も溶融塩中に溶けるようにすることで反応をさらに促進することを考えた。酸化サマリウムに変えて塩化サマリウムを用いて同反応をおこなったところ、Fe相の残存はあるものの、その残存量はおよそ1/10まで低減することが出来た。現在、Fe相のないSm2Fe17微粉末のため、作製条件の調整を行っている。
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