研究課題/領域番号 |
16K18231
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白石 貴久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50758399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エピタキシャル成長 / 斜方晶相 / ドーパント添加 / 超薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、HfO2超薄膜に強誘電性と強磁性の両特性を付加することである。そのためには、結晶構造制御とその詳細な解析が必須である。当該年度の研究計画は、HfO2超薄膜に強磁性元素であるFe,Co,Niを添加することで、極性を有した斜方晶相を発現させることである。また、詳細な結晶構造解析を行うためにエピタキシャル成長させる。そこで、スパッタリング法を用いて、(100)YSZ単結晶基板上に膜厚20nm以下のHfO2超薄膜を室温で堆積した後、急速熱処理法により結晶化処理を施すことで製膜した。 まず、添加元素をFeとし、スパッタリング条件や熱処理条件を変えたサンプルを作製し、X線回折測定を行った。これより、全ての条件でFe添加HfO2超薄膜がエピタキシャル成長していることが明らかとなった。これは、YSZ基板とHfO2の格子ミスマッチが非常に小さいためである。しかし、結晶性や結晶配向性は堆積条件と結晶化条件によって大きく異なっており、堆積速度を0.01 nm/secにし、結晶化条件を900℃,10min,N2雰囲気にした場合に最も優れた結晶性と結晶配向性を有しており、最適な製膜条件を見出した。 次に、最適条件で製膜したサンプルに対して、透過型電子顕微鏡観察を行った。これより、極性を持たない単斜晶相と極性を有した斜方晶相が共存していることが明らかとなり、当該年度の目標である斜方晶相の発現に成功した。また、結晶化処理前のサンプルを観察することで、室温で堆積された超薄膜は、アモルファスではなく結晶化していることが明らかとなった。その結晶相はYSZ基板と同じ立方晶相の可能性があり、結晶化処理時の相転移機構の解明に繋がると期待している。 以上より、スパッタリング法により、斜方晶相を有したエピタキシャルFe添加HfO2超薄膜の作製に成功し、強誘電性付加の可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の計画では、Fe,Ni,Coを添加したHfO2超薄膜をエピタキシャル成長させ、極性を有した斜方晶相を発現させることである。当該年度では、それら全てを達成しており、優れた結晶性および結晶配向性を有した超薄膜の作製が可能となっている。そのため、進捗状況は、計画通りにおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、次年度の研究計画に沿って研究を遂行する。前年度で明らかにした製膜条件を用いて、添加元素の最適量を明らかにする。添加量の異なるスパッタターゲットを作製し、それらを用いて製膜した後、X線回折測定を用いて極性を有した斜方晶相と極性を持たない単斜晶相の体積分率を算出する。これより、斜方晶相発現に最適な添加量を見出す。また、作製した超薄膜に対して走査透過電子顕微鏡による原子分解能観察を行うことで、斜方晶相の極性方向を明らかにする。 前年度の課題としては、極性を持たない単斜晶相が共存している点である。そこで、斜方晶相の生成メカニズムや相転移機構を明らかにする必要がある。そこで、温度可変ホルダとX線回折装置を組み合わせることで、各温度での結晶相変化を観察し、相転移温度や各結晶相の温度安定性について調査する。 以上より、単斜晶相の生成を抑制し、斜方晶相のみを有したHfO2超薄膜を実現するための方法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で申請していた高速熱処理炉とその備品関連を所属先で準備して頂くことが出来たため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の設備備品としてスパッタ用加熱ホルダを計上しているが、前年度の残額と合わせて、新たにチャンバーを増設する計画である。これより、材料毎で使い分けることができ、不純物や他の材料の混入を防ぐことが可能である。
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