研究実績の概要 |
本研究の目標は、HfO2超薄膜に強誘電性と強磁性の両特性を付加することである。当該年度の研究計画は、元素添加した超薄膜の電気的・磁気的性質を評価することで、二つの異なる性質の相互作用を明らかにすることである。 前年度で見出したFe添加HfO2超薄膜を用いてキャパシタ構造を作製し、電気特性評価を行うことで、強誘電性ヒステリシスループの観測に成功した。特に、最適組成である6mol%の添加量において最大残留分極値を観測したことから、構造解析の結果と良い一致を示した。一方、磁気的性質は常磁性体と同様の振る舞いを示しており、強磁性的振る舞いが観測されなかったことから、熱処理雰囲気をAr, O2, N2, 脱気の4条件で再検討した。どの条件においても、エピタキシャル成長した超薄膜が作製可能であり、斜方晶相の形成を観測したことから、強誘電性が付加されていることを明らかにした。しかし、当初の目的であった強磁性の付加には至らなかったため、ドーパント種や母材種の検討が必要である。 Fe添加HfO2超薄膜に対するX線回折測定の結果において、全ての組成で極性を持たない単斜晶相が観測された。これは、マクロスコピックに単斜晶相が形成されていることを意味しており、強誘電性の向上には単斜晶相の形成を抑制し、斜方晶相のみで構成された超薄膜を実現することが望ましい。そこで、強誘電性の観点から添加するドーパント種を検討した。その中でも、カチオンサイズがHfより大きいCeを添加したHfO2超薄膜において、X線回折測定の結果において単斜晶相が観測されなかった。つまり、Ce添加によって斜方晶相の安定化度が向上したことが明らかとなった。 以上より、HfO2超薄膜に対して、種々のドーパントを検討することで、強誘電性の付加に成功し、結晶相への影響、相転移温度への影響、強誘電性への影響について明らかにした。
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