研究課題/領域番号 |
16K18237
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
堀出 朋哉 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (70638858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薄膜 / 超伝導材料 / 熱電材料 |
研究実績の概要 |
薄膜においてひずみを制御するためにはまずは単層薄膜を作製し配向制御を行う必要がある。平成28年度はパルスレーザー蒸着法を用いてSnSe薄膜およびFeSe薄膜を作製した。薄膜作製用ターゲットは真空封入したSnSe粉末およびFeSe粉末を焼結することにより作製し、その後パルスレーザー蒸着を用いて薄膜作製条件の探索を行った。 SnSe薄膜作製では、パルスレーザー蒸着においてターゲット基板間距離を変化させたところ、基板間距離が3cm以下のときSrTiO3とMgO基板上にSnSeが形成された。このようにターゲット基板間距離がSnSe薄膜成膜において重要なファクターであることが分かった。SnSe薄膜はa軸配向しており、面内配向も4回対称性を示していた。また格子定数aはSnSeバルクのものよりも大きな値となった。組成分析の結果ターゲットのSe/Sn比が1以下となっており、Seの蒸気圧が高いことに起因して組成ずれが起き格子定数がバルクのものから変化したと考えられる。 FeSe薄膜作製ではターゲット基板間距離5cm、基板温度300-500℃でc軸配向したFeSe薄膜が作製できることを確認した。基板をSrTiO3、LaAlO3、CaF2と変化させて、FeSe薄膜を作製したところ基板に依存して格子定数が変化しており、基板によるひずみが薄膜に生じていることがわかった。さらにFeSeコンポジット薄膜の作製を行い、コンポジット膜中でもFeSe相が形成されたことも確認した。 また第一原理計算や有限要素法を用いて薄膜におけるひずみや高温相の構造安定性の議論を行った。SnSeにおいてSe量を変化させたときの格子定数および全エネルギーの計算を行った。Se量を減少させるにしたがい、格子定数及び高温相と低温相のエネルギー差が極大となる組成があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
a軸配向SnSe薄膜およびc軸配向FeSe薄膜を作製することに成功しており、ひずみを制御するにあたり基本的な薄膜作製条件および配向制御条件は明らかにすることができた。特性制御のためのチューニングは今後必要ではあるが、薄膜作製および配向制御までは行えており、おおむね計画通り研究が進んでいる。 FeSe薄膜作製条件探索の過程で、基板を変化させることにより格子定数が変化することを明らかした。このように基板によるひずみ制御が可能であることを実証できている。またFeSeについてはコンポジット薄膜作製を開始しており、この点については計画よりも早く研究が進んでいると考えられる。 ひずみ設計に関しては、第一原理計算を用いてエネルギー計算することによりSnSe高温相の構造安定性を議論している。平成28年度はSe量を変化させて構造安定性を議論できた。作製した薄膜の構造情報(格子定数やSe量)を取り込んでひずみによる構造相転移制御を議論するとともに、ひずみが構造安定性に及ぼす影響を議論できる手法の準備が完了した。このように概ねひずみ設計に関しても順調に研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には薄膜作製条件を明らかにすることができた。また基板やコンポジット薄膜化によるFeSe薄膜のひずみ制御の可能性を示すことができた。平成29年度にはひずみを用いた特性制御の実証を目的として、以下の2点に着目して研究を行う。 1. 特性詳細評価:SnSe薄膜の熱電特性の評価は自作装置を用いて行う予定である。平成28年度から準備を進めており、平成29年度の早い段階で測定システムを完成させ、熱電特性の詳細な評価を行う。またFeSe薄膜の超伝導特性の評価も平成28年度に一部行っており、平成29年度にはひずみ制御に成功した試料については磁場中特性や磁化特性等も必要に応じて行う。 2. ひずみ制御:SnSeではSe量により格子定数が大きく変化し、SnSe高温相の構造安定性も変化することが分かった。SnおよびSeサイトをGe、Pb、Te、Sで置換した薄膜を作製し格子定数と構造安定性の制御を行う。本検討においては第一原理計算を用いて格子定数の変化や構造安定性の変化を予測しながら材料選択を行う。FeSeでは基板による格子定数の変化が観察されており、精密な格子定数制御のためにバッファー層探索を行う必要がある。同様に膜厚の薄いSnSe薄膜ではひずみ制御においてバッファー層が有効であり、SnSe薄膜、FeSe薄膜共通の手法としてBaZrO3、BaSnO3など単結晶基板では入手できない(または難しい)材料をバッファー層として作製する。さらにFeSeやSnSeのコンポジット薄膜を作製する。基板等に用いている材料(SrTiO3、LaAlO3、MgO)を中心にFeSeまたはSnSeとコンポジット化を行いひずみ制御を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり、請求額とほぼ同額の助成金を使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の助成金と合わせて消耗品等を購入する予定である。
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