研究実績の概要 |
カルコゲナイドは鉄系超伝導、巨大熱電変換などを示し、薄膜化による特性向上やデバイス応用などが期待される。しかし薄膜において機能制御を行うには、薄膜作製技術の確立と高度な構造制御技術が必要である。本研究ではFeSe超伝導薄膜とSnSe熱電変換薄膜において薄膜作製技術およびひずみ制御技術を確立し、超伝導特性と熱電変換特性を向上させることを目的に研究を行った。 パルスレーザー蒸着を用いてFeSe薄膜作製を行った。Tconset=10K程度を有するFeSe薄膜を作製し、さらにSurface modified法を用いてFeSe薄膜にSrTiO3を導入しナノコンポジット薄膜の作製を行った。X線回折と透過型電子顕微鏡観察の結果、c軸配向したFeSeが成長し、その中にナノロッドが成長していることがわかった。またSrTiO3添加量の増加とともにFeSeの格子定数が変化し、ひずみ制御が行えていることが分かった。成膜温度最適化によりFeSe+SrTiO3ナノコンポジット膜において電気抵抗の温度依存性が金属的になるところまで最適化を進めることができた。今後組成を最適化することにより超伝導発現を行う必要がある。 パルスレーザー蒸着を用いてSnSe薄膜の作製も行った。SnSexターゲット(x=1.0,1.2)を用いて、a軸配向SnSe薄膜を作製した。面直格子定数、面内格子定数ともにバルク値から変化していることが逆格子マッピングからわかり、ひずみが導入できたことを確認した。x=1.2としたとき、電気伝導率は0.1S/cm(室温)、9.5S/cm(300℃)となり、室温でのゼーベック係数は585μV/Kとなった。一方、x=1.0では電気伝導率が一桁以上小さく、ターゲット組成は熱電特性に極めて大きな影響を及ぼすことが分かった。今後、組成やひずみと熱電特性の関係をより詳細に調べていく必要がある。
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