研究実績の概要 |
本研究では,ダイヤモンド半導体,特にn型ダイヤモンドのOhmic接触の形成に向けて,金属-ダイヤモンド間に導電性の超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボン混相(UMCD/a-C)膜を挿入することで,接触抵抗の低減を目指す. 2年目にあたる平成29年度は,UNCD/a-Cを適用するn型ダイヤモンドとなるリンドープダイヤモンドの結晶成長に注力した.前年度,熱フィラメントCVD装置の立ち上げから,特殊高圧ガス出ないリン不純物原料の選定を行い,危険性の低い有機リン溶液を用いた多結晶ダイヤモンドの成長が可能であることを確認している.n型ダイヤモンドの成長に関してマイクロ波CVD法による結晶成長の報告がほとんどであり,熱フィラメントCVD法による結晶成長,特にエピタキシャル成長に関する報告例はない.本研究では,マイクロ波CVD法でのメタンとフォスフィンを原料としたn型ダイヤモンドの成長条件を参考にして,成長プロセス中のP/H比(約2%)を固定して,C/H比(0.1-0.8%)およびステージ温度(700-1000degC)を変化させた条件でそれぞれ結晶成長を行い,成長後の多結晶ダイヤモンドの表面形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した.また,エピタキシャル成長について,ダイヤモンド単結晶基板は表面の結晶面やオフ角等の基板の状態が結晶成長に大きく影響するため,本研究では,粒径1 mm以下のダイヤモンド結晶粒を用い,各結晶(100),(111)面での成長様式を調査した.有機リン溶液を用いた結晶成長において,(100)面ではC/H比を高め,(111)面ではC/H比を低くすることで,それぞれステップフロー成長が可能であることが明らかになった.今後は得られたリンドープダイヤモンド膜のHall効果測定を行い,n型半導体特性と膜中のリン濃度の関係を明らかにする.
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