研究課題/領域番号 |
16K18240
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50613296)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ナノ材料 / グリーンプロセス / 層状複水酸化物 / ゾル-ゲル反応 / ナノ触媒 |
研究実績の概要 |
水中で合成可能かつ応用可能な環境材料として層状複水酸化物(LDH)に着目し、そのナノ微細化と水溶媒に対する高濃度分散を実現することで、新たな機能応用を開拓することを目的とした。簡便かつ低環境負荷の新規材料合成プロセスを開発するとともに、材料特性を最大限に生かした機能応用を提案することを目指す。 研究初年度である平成28年度は、Ni-Al系複水酸化物ナノクラスターの形成メカニズムを詳細に調査するとともに、ナノ触媒特性評価を始めとした応用展開に向けた予備的な検討をおこなった。具体的には、Ni-Al系LDHナノクラスターが解膠を伴うメカニズムにより形成していることを明らかにし、また各反応時間における粒子径、結晶性、粒子の凝集状態等の構造情報を系統的に得ることに成功した。ここで明らかになった水酸化物ナノクラスター形成メカニズムは本合成手法の組成汎用性を示唆するものであった。 これらNiAl系LDHナノクラスター形成メカニズムに関して得られた知見に基づいて、NiAl系 LDH以外の異なる化学組成系に対しても本手法を拡張し材料の合成を試みた。結果として、合計3種類の組成系において水酸化物ナノクラスターの合成に成功した。 本年度に得られた成果の一部は既に論文化している。現時点において論文化に至っていない内容に関しても国内外の学会にて発表おこない議論をすすめてきた。次年度においては、応用展開に比重を置いた研究を進めるとともに、上記の未公表データを学術論文誌に投稿することを計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載したA~Dの4つの達成目標のすべてにおいて進捗があり、次年度(2年目)の研究において計画している「材料の応用展開」に対する充分な足掛かりを得た。具体的には以下の通りである。 (研究目標Aに対する進捗状況)当初の研究計画に従って、NiAl系LDH ナノクラスターの形成過程の解明/サイズ形状制御をおこなうことを目的として、その場観察法を利用して各反応過程における材料特性を評価した。 (研究目標Bに対する進捗状況)上記研究目標Aに関連して得られた知見に基づいて、NiAl系以外の2種類の組成系への本手法の拡張にも成功した。これら得られた成果は国内学会にて発表済みであり詳細を近々論文誌として公表する。 (研究目標Cに対する進捗状況)また、合成したLDHナノクラスターの触媒活性を評価する目的のために、色素およびCO2還元反応における触媒活性評価をおこなった。どちらの触媒反応実験においても本材料系が高い触媒活性を示すことを既に実証している。次年度は引き続き系統的な触媒活性評価を進める。 (研究目標Dに対する進捗状況))得られた結晶をナノビルディングブロックとして利用することでメソ多孔性薄膜の作製に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度は計画通りに研究が進捗しており目標達成上の問題点は存在しない。当初計画を変更せずに申請時の計画通りに研究をおこなう。 具体的には組成系の拡張に関する端緒を見出した系を更に詳細に検討し知見を蓄積する。また、異種化学組成を有する水酸化物ナノクラスターを混合しナノモザイク表面を有する材料を合成しその物性評価をおこなう。さらには、LDHナノクラスターのナノ微細性と溶媒分散性を利用した応用として生体適合性を有するX線造影剤としての利用を検討する。初年度に得られた研究成果のうち、Li-Al系、Co-Al系 LDH合成に関する初報を執筆中であり研究2年目にこれらを纏め論文誌に投稿する予定である。また、7月と9月の2回、国際学会(採択済み)での口頭発表を予定している。これらの研究発表を通して、現在進行中の研究成果をまとめると共に研究成果の国際的なプレゼンスを高める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
その他の費目として計上する予定であったICP依頼分析(受託分析)が実験進捗の都合上想定回数を下回ったため次年度使用額が生じている。また、初年度の消耗品購入が当初予定を下回ったことも次年度使用額が生じたことに繋がっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
初年度の研究進捗を受けてより多くの組成系での材料合成が必要であるため、消耗品費は初年度と比較し増加する見込みである。また、論文共著者からの打診もあり、当初計画になかった国際学会発表での発表を次年度に決定している。これら、消耗品費と旅費に対して「次年度使用額」を充当する予定である。
|