研究課題/領域番号 |
16K18243
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平澤 英之 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 准教授 (60511540)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁性材料 / フェライト / 交流磁場 / 誘導加熱 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、癌の新しい治療法として提案されている『誘導焼灼治療』の実用化であり、これを達成するため、1交流磁場中で著しく発熱するフェライト微粒子の開発、2発熱メカニズムの学術的な解明を行なう。 これまでの研究から、低損失材料であるはずのガーネット系フェライト(R3Fe5O12)が従来の発熱材料の2倍以上優れた特異的に高い発熱能を有することを初めて発見しており、この新しい発熱メカニズムの究明に挑戦すると共に、更なる高発熱材料の開発を行なう。そこで本研究では、フェライト系材料の発熱能力の向上に有効であると考えている、(1) Y3-XGdXFe5O12などのイオン置換、(2) 添加元素による粒子成長制御、(3) ビーズミルを用いた物理的粉砕、の材料開発手法に着目し、研究を行なっている。 H28年度の成果として、Y3Fe5O12のFeに、Alを置換させたY3Fe5-XAlXO12を作製することで、発熱能力が向上する事を発見している(未発表)。また、Y3Fe5O12を逆共沈法で合成する際、pHの影響により発熱能力が大幅に向上する事を発見した(国際会議にて報告済)。さらに、sol-gel法で作製したY3Fe5O12についても、優れた発熱能力を有する事を見出し、これをビーズミルで粉砕する事により、目的とする粒子径まで微粒子化する事に成功している(国際会議にて報告済)。以上のように、基本となるY3Fe5O12の発熱応力を向上させる材料開発手法について、明らかにすることができており、今後この発熱能をさらに向上させるため、置換型Y3Fe5O12系材料の開発に挑戦する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は、基本となるY3Fe5O12フェライトの発熱能力を向上させる2つの合成方法を見出すことに成功した。逆共沈法では、合成時のpH制御により発熱能力が大幅に向上することが分かり、sol-gel法では有機高分子材料の添加量により発熱能力が向上する事がわかった。いずれの方法で作製したY3Fe5O12とも、従来の発熱能力よりも格段に優れた発熱特性を有しており、今後は元素置換や結晶相制御によりさらに発熱能力を向上させることが可能であると考えている。 また、モンゴル科学アカデミー、モンゴル国立大学の共同研究者とも連携し、中性子線回折による磁気構造解析を行なうことができており、この優れた発熱能力を説明するための有力なデータを得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
ガーネット系R3Fe5O12は全ての希土類元素(R)で作製が可能であり、その組成や置換元素、合成法や焼成温度などのパラメータが非常に多いため、H28年度に継続して、H29年度も材料開発を行うとともに、発熱メカニズムの解明に迫る。 また、最近の研究によりMgFe2O4に微量のLa3+イオンを添加したフェライトを作製したところ、発熱能力が大きく向上することを発見している。しかし、このLa3+添加型MgFe2O4のヒステリシス損失は逆に低い値を示しており、1200度の高温焼成で粒子が粗大化していることからもネール緩和による発熱ではない。つまり、La3+添加型MgFe2O4の発熱能力は、Y3Fe5O12の示す特異な発熱能力同様、これまでのメカニズムでは説明できないものであり、これは交流磁場による発熱メカニズムを解明するための一つの新しい糸口であると考えている。そこで今後の研究は、1元素置換によるY3Fe5O12系フェライトの作製、2Y3Fe5O12系フェライトへのLa添加により、材料開発を行ない、その特性評価により発熱メカニズムの解明に挑戦する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究により作製した発熱磁性材料は、生体内に投与する際リポソームによる包埋処理を行なう必要があり、ナノサイズまで微粒子化を行なう必要がある。今回、この微粒子化を行なうためビーズミル粉砕装置を用いる予定であったが、装置が故障したため修理を行なった。これにより、装置本体は使用可能となったが、その後粉砕用容器も破損し、修理を行なう必要が出ている状況である。このように、ナノ粒子化に関するスケジュールが遅れており、次年度に精力的に研究を進めるため、次年度に予算を計上している。さらに、今年度得られた多くの研究成果を次年度の国際会議で5件発表する予定であり、このための経費を次年度に計上する。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度早々に粉砕容器の修理を見積り、粉砕に関する研究を急ピッチで行う。このため、電気炉を更に購入し、試料の作製を4月より早々に行なう。 さらに、国際会議での発表を5件行なう事とし、これに向けて粉砕したデータを早々にまとめる予定である。
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