研究課題/領域番号 |
16K18246
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小濱 和之 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (00710287)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 異材接合 / セラミックス / 耐熱部材 / 粉末 / 微粒子 / 融点降下 / 液相焼結 / 等温凝固 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究では、まずTiC/Al混合ペーストを用いてSiC焼結体またはTi-Al系合金と中炭素鋼を接合した。AlはTiCの融点を降下させるため液相焼結による接合層緻密化に寄与する一方、蒸気圧が高いため接合時の高温保持時に真空中へ蒸発・除去されると考えられる。このため接合温度を低減できると同時に接合後の接合部の耐熱性を高温維持することが可能と期待される。上記の混合ペーストを用いることで、接合温度の大幅な低減が可能であることがわかった。一方、接合界面近傍に発生する熱膨張差に起因する熱応力の緩和に一定の効果があることがわかったが、微小なクラックの発生等により接合強度が低く、まとまった成果(学会発表等)には至らなかった。これを改善する方策として、W, Ta, Mo, Nbなどの高融点・低熱膨張金属を添加元素もしくはインサート材として上記ペーストと組み合わせて用い、熱応力の緩和を図る予定である。 一方、Si/Al混合粉末ペーストを用いたSiC焼結体同士の接合を行い、本研究課題で提案する接合手法の有効性の実証に取り組んだ。Siの融点降下元素であるAl添加により液相焼結を促進することで、Siの融点(約1400℃)よりも低い800~1300℃の低温保持で緻密な接合層を形成でき、高強度SiC接合体を作製できた。Alの大部分は真空中へ蒸発・除去され、形成された接合層は大部分が多結晶のSi固溶体だった。ペーストの初期Al組成とSi-Al液相線組成との関係に基づいて、保持温度における接合部の液相生成量を制御することで、接合層の組織微細化・高強度化と、接合体の接合強度の向上が可能と示唆された。これらの成果を基に、新規のSiC部材接合法としての実用化に向け、企業との連携による実証実験へ発展することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、Ti-Al系合金やSi系セラミックス複合材などに代表される耐熱部材と鋼材など汎用部材との異材接合部に種々のセラミックス微粒子ペーストを塗布し、放電プラズマ焼結装置を用いて加熱・保持し、薄いセラミックス接合層の形成により高信頼性接合を達成する手法を検討している。平成28年度は、上記検討のための基礎的知見を得るため、種々の組み合わせの異材接合および耐熱部材同士の接合を、セラミックスとAlの混合ペーストを用いて行った。研究実績の概要に記載したように、セラミックスとAlの混合ペーストを用いることで、接合温度の低減と接合層の緻密化を達成することが可能であることがわかったが、異材接合への適用に際しては、接合部に発生する熱応力の緩和が十分に達成されなかった。一方で、Si/Al混合粉末ペーストを用いたSiC焼結体同士の接合を行い、本研究課題で提案する接合手法の有効性の実証に取り組んだ。これらの成果を基に、接合温度低減と接合部高温強度維持の両立が必要とされているSiC部材に対する新規接合法として、企業との連携による実証実験へ発展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、セラミックスとAlの混合ペーストを用いることで、同材接合については接合温度低減と接合層緻密化の達成が可能であることがわかったが、異材接合への適用に際しては接合部に発生する熱応力の緩和が十分に達成されなかった。これを改善する方策として、高融点・低熱膨張金属を添加元素もしくはインサート材として上記ペーストと組み合わせて用い、熱応力の緩和の方策を検討する予定である。まずは高融点・低熱膨張金属の異材積層クラッドによる熱膨張係数傾斜インサート材をペースト塗布による低温接合で事前に作製することや、耐熱部材の異材接合部にインサート材とペーストを同時に挟み込み一度に接合することなどを検討する。一方、Si/Al混合粉末ペーストを用いたSiC焼結体同士の接合については、連携企業との共同研究の枠組みを構築し、高温強度の評価など実用化に向けた実証実験を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要に記載の通り、セラミックスとAlの混合ペーストを用いることで、同材接合については接合温度低減と接合層緻密化の達成が可能であることがわかったが、異材接合への適用に際しては接合部に発生する熱応力の緩和が十分に達成されなかった。その改善方策として、高融点・低熱膨張金属を用いた代替手法などを検討することとなり、これに伴う試料収集や予備実験棟を行う時間が長くなり、実験に使用する消耗品の購入や試料の分析等にかかる費用が当初計画より減ったため、翌年度への繰り越しの助成金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の推進方策に記載した通り、高融点・低熱膨張金属を添加元素もしくはインサート材として上記ペーストと組み合わせて用い、異材接合における接合部近傍の熱応力緩和の方策を検討する予定である。高融点・低熱膨張金属を新たに購入したり、その切断・研磨・エッチング等に使用する消耗品の購入などに充てる計画である。一方、Si/Al混合粉末ペーストを用いたSiC焼結体同士の接合については、連携企業との共同研究の枠組みを構築し、高温強度の評価など実用化に向けた実証実験を推進する。これに関する打ち合わせや、試験の外部委託、試料の送料などを新たに使用する計画である。
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