平成29年度の研究では、前年度の知見を基に、V・VI族の高融点金属の異材接合に取り組んだ。これらの金属は熱膨張係数差が比較的小さく、熱応力による接合部の割れなどの欠陥が生じにくい。また、特にTaとWの積層クラッド材などの実用化が期待されているが、母材が劣化しないよう1300℃以下で接合しつつ、1300℃程度の高温に耐えられる接合体を作ることが望ましく、本研究で提案するセラミックスペーストを用いた低温接合の効果を実証しやすいと考えた。具体的手法としては、WとTaの丸棒を用い、Si/Al混合粉末ペースト中の初期Al組成を0~10 at.%と変化させ、接合温度1200℃もしくは1300℃、保持時間10分の条件で接合したところ、全て接合可能だった。SiペーストにAlを少量添加することでSiが融点以下で溶融し、低温接合が可能になったと考えられる。大部分のAlは接合時に周囲の真空中へ蒸発・除去されていたが、微量のAl酸化物が接合部に残留していた。接合部にはWとSiもしくはTaとSiからなる金属間化合物層が形成されていた。Al酸化物と金属間化合物のいずれも1300℃程度以上の高温に耐えられるものであり、接合部の耐熱性が維持された接合体が形成できた。接合強度増大のためには、初期Al組成を適切に選択し、金属間化合物層中の微細なボイドや残留Al酸化物を減少させることが重要と明らかにした。その知見に基づき、接合温度1200℃と低温の場合でも、室温引張強度は最大で約70 MPaと、高強度接合体が得られた。 一方、Si/Al混合粉末ペーストを用いたSiCの接合については、前年度に引き続き、連携企業との共同研究を維持しつつ、実用材を用いた高温強度の評価など具体的な実証実験の検討を推進した。 このように、研究期間全体を通じて、セラミックスペーストを用いた耐熱部材の異材接合を実証し、道筋をつけることができた。
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