シリーズ抵抗スポット溶接を用いてオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)と種々の熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化樹脂(CFRP)の異材接合を行った。その結果、ポリアミド6(PA6)、酸変性ポリプロピレン(PP)は直接接合が可能であったが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)は接合出来なかった。これは分子鎖中の極性官能基の有無に起因すると考えられ、抵抗スポット溶接を用いた融着法においては、マトリックス樹脂中の極性官能基と金属の酸化被膜で生じる相互作用によって接合が達成されることが示唆された。炭素繊維として連続的な長繊維を用いて極めて炭素繊維添加量の高いCFRP、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂をマトリックスとするCFRPの接合を行った結果、それぞれ直接接合は困難であった。これらに対しては、界面にPA6等の極性を有する熱可塑性のフィルムのインサートによりCFRPで層間剥離する程の強固な接合が可能となった。 次にアルミニウム(Al)合金への適用および自動車産業における普及を目指して、電極形状に工夫を行ったコアキシャル抵抗スポット溶接法を考案し、Al合金/CFRPの異材接合を試みた。その結果、小電流であっても電流密度を増加させることで、電気抵抗が小さいため抵抗溶接が困難とされるAl合金とCFRPの融着が可能であることを明らかにした。さらに、この方法においても接合前の金属に表面処理を施し、異材接合界面の構造制御を行った結果、シランカップリング処理や化成処理によって表面の化学状態を変化させることで、CFRPで母材破断を呈し、せん断強度20MPa以上の強固な継手の作製が可能であることを明らかにした。また、この方法ではAl合金に加えて、ステンレス鋼、炭素鋼、亜鉛メッキ鋼板、マグネシウム合金、チタン合金等への適用も可能であった。
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