金属ナノ粒子をZnO中に分散させたナノコンポジットを合成するため、原料粉末としてZnOナノ粒子と金属ナノ粒子を同時析出させたナノ粉末の合成手法を確立し、それらを用いた焼結体の構造と熱電特性の評価を実施した。 液相前駆体法を用いて100 nm以下のAgナノ粒子とZnOナノ粒子の同時析出を可能にし、3 nm以下のAuナノ粒子が担持したZnOナノ粉末の合成がそれぞれ可能となった。各ナノ粉末は1ロットあたり10g得られるようスケールアップし、焼結体を得るには十分な量を得ることができた。 まずAgを導入したナノコンポジットでは、分散するAg粒子の粒径はサブμmオーダーであり、Agの添加量に伴いZnOの導電率は2桁増大したものの、有効的なフォノン散乱の効果は得られず熱伝導率の低減には至らなかった。一方、Auを導入したナノコンポジットでは、常圧焼結ではAuの粒径は~150 nmに成長していたものの、放電プラズマ焼結(SPS)法を用いることにより、Auの粒径は50nm以下にまで低減が可能となった。Alをドープしただけの試料(Au 0%)の導電率はZnOと比べて1桁以上向上し、Auの添加によりさらに向上した。Auを0.15%導入したナノコンポジットでは、673 Kにおける格子熱伝導率はAu 0%と比べて0.8 W/mK低く、Auナノ粒子の導入効果はフォノン散乱の増強であることが示された。しかし、Au 1.5%では0%の試料と比べて全熱伝導率は増大し,有効的に熱伝導率を低減するには最適なAuの適正量の存在が示唆された。このため、「導電率の向上」および「Auのサイズと最適な導入量による熱伝導率の低減」が可能となり、このようなナノコンポジットの形成は熱電性能の向上の一つとなりうることが示された。
|