研究課題/領域番号 |
16K18249
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
中村 嘉恵 芝浦工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10772741)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難燃性マグネシウム合金 / AZX612 / 表面処理 / 蒸気コーティング法 / 防食皮膜 / 腐食促進試験 |
研究実績の概要 |
Mgは次世代の金属材料として期待されているが,腐食しやすく燃え易いという課題がある.これを克服するために,当研究グループは,これまでに,Mg(マグネシウム)合金表面への防食膜生成技術「蒸気コーティング法」を開発してきた.本研究では,(1) 蒸気コーティング法による難燃性Mg合金上への耐食性皮膜の形成技術の開発,(2) 難燃性Mg合金上に形成させた皮膜の形成メカニズムの解明,(3) 実環境を想定した腐食環境下における蒸気コーティング法の有用性の評価,の3項目に関する研究開発を行い,難燃性Mg合金に優れた耐食性を与えるための皮膜形成技術の確立およびその皮膜の耐食性を評価する. H28年度は,上記の項目のうち,(1), (2)を行い,以下のことを明らかにした.蒸気コーティング法は,難燃性Mg合金に対しても耐食性を向上させる効果をもたらすことがわかった.また,従来からあるAl(アルミニウム)-Zn(亜鉛)系Mg合金上に生成された皮膜は,Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)と Mg-Al系LDH(層状複水酸化物)で構成されるが,難燃性Mg合金上の皮膜には,これらに加えて,AlO(OH)(ベーマイト) も含まれることがわかった. 皮膜の形成メカニズムは,成膜中に対象基板を取り出し,これを分析することによって調査した.その結果,皮膜は,次のように形成されると考えられる.処理の初期段階で,基板表面の酸化皮膜成分MgO(酸化マグネシウム)と水が反応してMg(OH)2 が生成され,これを核として皮膜が成長する.Mg-Al系LDHは,皮膜の主成分 Mg(OH)2 が形成される過程で,合金中に存在するAlが,皮膜の主成分 Mg(OH)2 の一部のMgと置換することでLDHの基層となり,この層間にアニオンが納まることで形成される.さらに,残ったAlが水と反応してAlO(OH)が形成される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的を達成するために設定した3つの研究項目のうち,2つに関してはすでに着手し,研究成果も得られているため.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的達成のために必要な3項目のうち,3つ目の研究を行う.ここでは,NO3(硝酸)イオン,SO4(硫酸)イオン,CO3(炭酸)イオンといった,腐食に影響を及ぼすと考えられるアニオンの単体,および塩水にアニオンを混入した溶液中における浸漬試験を実施する.浸漬時間を変化させて,腐食促進試験を実施し,一定時間浸漬後に形成される腐食生成物の種類や形態を調査する.まず,実環境模倣の溶液を調整することを目的とする.よって,最初の浸漬試験では,未処理の難燃性Mg合金を用いる.また,未処理の難燃性Mg合金の暴露試験も併せて実施し,その腐食挙動を調べる.これらの結果を突き合わせることにより,実環境で形成される腐食生成物と同様の腐食生成物が形成可能な溶液種を検討する.最終的には,蒸気コーティング処理した難燃性Mg合金を対象として浸漬試験を行い,本処理方法の有用性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は計画に入っていなかったが,研究の途中で,溶液調整を,より精密に行うためにグローブボックス内で作業を行う必要があることがわかった.これを購入するために使用したため.
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次年度使用額の使用計画 |
蒸気コーティング処理を,より詳細に処理条件を設定して実験を行うために,新たに温度調節器を購入する予定である.また,H28年度の研究成果をまとめた論文を執筆しているため,その掲載料に充てる.
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