研究課題/領域番号 |
16K18250
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
村井 一喜 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (30756268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペプチドハイドロゲル / ミネラリゼーション / 炭酸カルシウム / 有機無機複合材料 |
研究実績の概要 |
生物は、骨・歯・貝殻等に代表される硬組織をタンパク質や多糖が形成する三次元テンプレート上で、酵素活性によるミネラル源の自己供給を利用したバイオミネラリゼーションにより形成している。これまでに報告されているミネラリゼーション研究では、二次元や三次元のテンプレートのモルフォロジーや表面ナノ構造が無機物に与える影響について議論されてきた。そのため、生態環境に類似した“三次元反応場”および“ミネラル源の自己供給”の両機能が無機物に与える影響は解明されていない。そこで本研究では、“三次元反応場”および“酵素様活性によるミネラル源の自己供給能”を併せ持つ多機能性ペプチドハイドロゲルを創製し、同ゲル中で生態模倣型ミネラリゼーションにより得られる炭酸カルシウムのモルフォロジーや結晶相に与える影響の解明を目的とした。特に平成28年度は、ペプチドハイドロゲルの形成とゲル特性がペプチドのウレアに対する加水分解活性に与える基礎的知見の収集に主眼を置き、研究を実施した。ペプチドハイドロゲルは、中性pH条件の水溶液にゲル化剤である酢酸カルシウム水溶液を滴下することにより形成した。ペプチドのウレアに対する加水分解活性は、ペプチドハイドロゲルの粘弾性強度の増加と共に低下することを明らかとした。加えて、ペプチドハイドロゲルの粘弾性強度を一定に保ったまま、ゲル化剤を添加した場合においてもペプチドの加水分解活性には大きな影響を与えないことがわかった。また、ゲル化剤の添加量を一定にし、粘弾性強度を低下させた場合には、ウレアに対する加水分解活性の向上が見られた。以上のことより、ペプチドハイドロゲル中でのペプチドによるウレアの加水分解活性は、ハイドロゲルの粘弾性強度に依存していることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果を学会等において発表しており、研究課題もおおむね当初の計画どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度において、設計したペプチドハイドロゲルのゲル特性(粘弾性強度)とペプチドのウレアに対する加水分解活性間での基礎的知見を収集した。平成29年度では、ペプチドハイドロゲル中でのウレアの加水分解から、ミネラリゼーションにより得られる炭酸カルシウムのモルフォロジーおよび結晶相にミネラル源の自己供給速度が与える影響に主眼を変え、研究を展開する。任意の粘弾性強度となるようにペプチドハイドロゲルを設計し、ミネラリゼーションにより得られる炭酸カルシウムを走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡および分校分析を用いたキャラクタリゼーションを行う。得られた結果より、炭酸カルシウムのモルフォロジーや結晶相と粘弾性強度およびウレアの加水分解速度の間での相関を検討し、炭酸カルシウムの形成メカニズムを明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学から研究費を獲得し、そちらから旅費を支出したため
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品等の研究経費に加え、研究成果の論文投稿費や学会参加費用として使用する。
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