研究課題/領域番号 |
16K18255
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
花田 信子 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (00606634)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 液体アンモニア電解 / 複合ナノ粒子電極触媒 / 気泡観察 |
研究実績の概要 |
水素キャリアとしての液体アンモニアから電気分解により水素を室温で取り出す際の課題として、窒素放出を伴うアノード反応の過電圧が格段に大きいことが挙げられる。本研究は2種類の触媒を付与した窒素吸蔵材料をアノード電極として適用し、アノード反応の過電圧低減を図ることを目的としている。昨年度に水素透過係数が大きいとされるbcc型金属に対して、窒素の拡散係数を文献調査した結果、水素の拡散係数に対しては10桁程度小さくなることが分かった。窒素吸蔵材料の拡散係数が大きすぎることから2種類の素反応の場を分離させるのではなく、触媒を直接ナノメートルサイズで複合化させた電極の作製を検討した。複合ナノ粒子を作製する方法として、スパッタ法を採用した。シリコン基板への触媒スパッタ時に、スリットがついたマスクを置いて膜厚を0.3~5nm程度に調整することで、サイズ分布のあるナノ粒子を作製した。2種類の触媒に対して、スリットの位置を90°ずらしてスパッタを行うことにより、2元系の組成および粒子のマトリックス分布が1枚の基板上で作製できた。今年度は特にPtとFeの2種類触媒組み合わせの検討を行った。3電極系の高圧対応観察窓付きのセルを用いて、アノード電位を変化させ、電極上のガス発生箇所をデジタルカメラにより観察した。2種類触媒付与基板上からの気泡が観察できることを確認した。しかし、電極基板を縦に固定して電解しているため、発生した気泡が電極基板上を覆ってしまい1次元的な触媒組成の違いしか評価できないことが分かった。そのため、今後は、電極基板を横に固定及び観察窓を上部に設置し、二次元的な触媒組成分布に対する電気化学特性を評価する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度計画分の「2.2種類の触媒を付与した窒素吸蔵材料を用いたアノード電極の検討」について、研究計画の見直しを行い、窒素吸蔵材料を用いずに2種類の触媒をスパッタ法により付与した電極を適用して研究を進めた。電極作製方法、電気化学特性評価方法の検討に時間を要したため、進捗がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
2種類の触媒をスパッタ法により付与したアノード電極の検討を進める。改良した観察窓付き高圧対応セルを用いて、電極触媒基板上の気泡発生箇所および量を特定することにより、電気化学的に活性な電極触媒組成および粒子サイズを特性する。また、2種類の触媒の選定は、当初の予定通りにN原子吸着促進触媒(Fe,Ru)とN原子再結合促進触媒(Co,Ni,Pt)として、液体アンモニア電解のアノード反応に対して活性となる触媒組み合わせを系統的に調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は液体アンモニア電解に対して2種類の触媒を付与した窒素吸蔵材料を電極として適用し過電圧低減を図ることを目的としていた。窒素吸蔵材料を用いた場合に窒素の拡散係数が比較的大きく電解の過電圧が大きくなることが分かった。そのため、研究計画の見直しを行い、窒素吸蔵材料を用いずに2種類の触媒をスパッタ法により付与した電極を適用して研究を進めた。3電極系の高圧対応の観察窓付きセルを用いて、電位を変化させ電極上のガス発生箇所の観察を行うことにより、活性な電極触媒粒子の組成および粒子サイズの特定を試みた。その結果、現在用いている観察窓付きセルの改良が必要なことが判明し、その設計に時間を要した。次年度は、改良した観察窓付きセル、電極作製および電気化学的評価のための消耗品を購入する予定である。
|