液体アンモニアから電気分解により水素を取り出す際の課題として、窒素放出を伴うアノード反応の過電圧が格段に大きいことが挙げられる。2種類の触媒を付与したアノード電極を適用して、アノード反応の過電圧低減を図ることを目的とした。まずは、一元系の触媒効果を調べるために、窒素との結合のしやすさが異なる触媒金属を用いて液体アンモニア電気分解を行った。特に低電位でのアノード反応に注目して電流密度の比較を行った結果、0.1 Vでの各触媒金属における電流密度を金属窒化物生成エンタルピーΔHf(MNx)に対してプロットすることにより相関関係が得られることが分かった。窒素との結合が特に強いTiやTaは電流密度が低くなり、結合が弱いNi、Ru、Irなどは電流密度が高くなった。その中でも、ΔHf(MNx)が-50~50 kJ/molの領域では火山型のプロットが得られ、窒素との結合が中間の強さである触媒金属にて高電流密度を示した。次に二元系触媒として、火山型プロットが得られた領域で最も窒素との結合の強さが異なるFeとPtの二元系金属触媒を作製し評価を行った。まず、Fe板上にスパッタ法でPtを担持して、Fe上にPt粒子が分布している触媒電極を用いた。その結果、Fe、Ptの一元系よりも高い電流密度が得られた。しかし、スパッタ法での担持によりPtの表面積増加が見られたため、表面積の効果を除いた検証が今後必要となる。さらに、Ti板上にスパッタ法によりPtとFeを担持して熱処理を行いPt-Fe合金を作製して、原子サイズでの2元系金属触媒を評価した。その結果、Fe、Ptの一元系よりも低い電流密度となった。窒素との結合の強さが大きく違う2つの触媒を組み合わせたFe-Ptでは、合金化によってアノード反応活性が低くなることが分かった。
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