研究実績の概要 |
Tiは骨との親和性が高く, 骨折固定具や歯科インプラント等,骨との接着部位に用いられる.これらの医療部材では骨との良好な接着性に加えて,骨とTiとの早期接着も求められる.そこで本研究では, 骨との接着強度が高く,早期接着性も合わせ持つTi表面の創製を目的として,細胞と親和性が高いアモルファス炭素(a-C:H)膜とTiとの微細テクスチャーを作製し, その特性評価を行った. 今年度は,マイクロ波(MW)プラズマ化学気相成長(CVD)法により,Ti基板上にa-C:H膜を作製し,細胞接着性タンパク質であるフィブロネクチンの吸着について調査・検討を行った.前年度に借用していた高周波(RF)プラズマによる成膜装置とは異なる装置を使用することとなったため,成膜装置の立ち上げと改造,各成膜条件(MW出力,成膜圧力)で作製したa-C:H膜の膜厚,密着性,水滴接触角の調査から行った. 本成膜装置を用いてMW-CVD法で作製したa-C:H膜は,ラマン分光およびフーリエ変換赤外吸収分光法から,高分子状であることがわかった.作製したa-C:H膜の水滴接触角は,150Wで作製したa-C:H膜では約62°,200Wでは約51°であった.作製したa-C:H膜上へのフィブロネクチンの吸着量をビシンコニン酸法にて測定した.150,200Wで作製したa-C:H膜上へのフィブロネクチンの吸着量にはMW出力による違いは見られなかった.さらに波長172 nmの真空紫外光(VUV)照射を行った場合,作製したa-C:H膜の水滴接触角に変化はなかったが,フィブロネクチンの吸着量が増加した.一方,TiにVUV照射を行った場合,水滴接触角は照射前と比べて低下し,フィブロネクチンの吸着量が減少した.
|