研究実績の概要 |
H29年度はポリスチレン(PS)粒子をテンプレートとして用いた多孔構造を持つ導電性高分子膜の作製およびそれらを用いた酵素電極について検討を行った。 (1) PS粒子を用いた微細構造の付与:PS粒子をキャストした電極を用いてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)膜を形成した結果,粒子の隙間がPEDOTにより埋まり,六角形が隙間なく敷き詰められた構造が得られた。しかしながら,PEDOTによりPS粒子を完全に被覆した場合,その後の粒子の溶解が困難であった。そのため,電極上に単層で粒子を敷き詰め,電極面から粒子の半径程度の厚さまでPEDOT膜を形成することとした。この手法により形成された膜は使用したPS粒子の直径程度の開口部および半径程度の高さの半球状のくぼみを敷き詰めた形状となった。この結果は,形状に乱れが見られたが,粒径が1 μmの粒子を用いた場合にも同様に得られた。 (2) PS粒子を用いて微細構造を付与した酵素電極の性能評価:PS粒子を用いて微細構造を付与した膜を用いて作製した酵素固定化電極により生成される酵素触媒電流は,粒径が5 μmのPS粒子を使用した場合,使用しない場合と比較して1.3倍程度に増加した。単純に半球状の構造が付与されたと考えただけでも表面積は平滑な場合と比較して2倍であり,実際の表面積差はさらに大きくなるはずである。それにもかかわらず,電流増加量が1.3倍程度であった理由は,粒子を使用しないで作製したPEDOT膜も多孔構造を示すため,面積増加の利得の割合が小さくなったためと考えられる。また,粒径1 μmのPS粒子を使用した場合には,膜質の低下が原因となり,酵素触媒電流は粒子を使用しない場合と比較して1/6程度に低下した。
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