研究課題/領域番号 |
16K18261
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
當代 光陽 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10610800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超高温耐熱材料 / 遷移金属シリサイド / クリープ強度 / 結晶方位 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
地球温暖化防止の観点から発電所や輸送機における燃費の改善が求められている。この解決策として現在使用されているNi基超合金やTiAl金属間化合物よりもより高温での使用が可能な次世代耐熱合金の開発が挙げられる。この候補材として2000°Cを超える融点を有する遷移金属ダイシリサイドが注目を集めている。こうした背景の下、本研究は次世代超耐熱合金として期待されている遷移金属シリサイドを用いて、近年我々の研究グループが開発した室温靭性値4.0mPa1/2を有するB添加高靭性C40/C11b複相シリサイド結晶の高温クリープ特性の支配因子を解明し、複相シリサイド結晶の高靭性化と高クリープ強度の両立に向けた組織制御の方策と設計指針の構築を目的とし、以下の4点に注目しつつ研究を遂行する。(1)方位制御複相シリサイド結晶中に形成する層状組織のマトリックスC40相と析出C11b相の結晶幾何学関係の解明、(2)層状組織の組織形態と熱的安定性、(3)クリープ特性の温度・方位・応力依存性ならびに支配因子の解明、(4)クリープ変形に寄与する活動転位の同定。以上の結果より本来Brittle相であるC11b相とC40相の遷移金属シリサイドそのものが有するintrinsicな変形異方性に加えて、層状組織における結晶幾何学から生ずるextrinsicな変形異方性を巧みに制御することで、単相では得られない室温靭性値、高温強度、高温クリープ特性を具備した次世代の高温構造材料としての複相シリサイド結晶を開発する。最終的にはC40/C11b層状組織を有するB添加複相シリサイド結晶を用いて、これまでにない革新的な高靭性化と高クリープ強度を具備させることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の目的である微細層状組織を有するB添加高靭性C40/C11b複相シリサイド結晶の高温クリープ強度向上に向けた設計指針の構築するためには本複相シリサイド結晶のクリープ特性の支配因子を解明することが必須であり、解決すべき課題は明確であり、以下の5点である。(1) 組成的過冷による初晶C11b相を回避し(包晶反応の回避)、かつ坩堝からの汚染、酸素混入が皆無である良質なC40単相単結晶の育成、(2) 1400℃での熱処理による層状組織の導入と層状組織の形態、安定性、結晶幾何学の解明、(3) C40/C11b層状組織を有するB添加複相シリサイド結晶の高温変形挙動の解明、(4) B添加複相シリサイド結晶における高温クリープ特性の方位、温度依存性の解明、(5) B添加複相シリサイド結晶におけるクリープ特性の支配因子の解明とクリープ特性向上に向けた設計指針の構築。 本年度はこの中における研究項目(1)および(2)について主に行った。具体的にはるつばからの汚染が皆無でかつ、結晶育成速度の制御することで包晶反応を回避させたC40単相単結晶を浮遊帯溶融法にて育成、今後の研究に必要な試料作製を行うとともに本研究で必要な試料を背面ラウエ法ならびに放電加工機にて作製した。加えて、C40単相単結晶に各種熱処理を施し、C40/C11b層状組織を導入に成功した。形成される層状組織形態および結晶幾何学についてC11b相の[001]方位(高強度を示す方位)に着目しつつ光学顕微鏡およびSEM-EBSDにて解析し、層状組織の体積率、C11b成長過程および結晶幾何学について詳細に解明した。以上より、本年度に予定していた研究計画はおおむねすべてクリアできた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究実績の概要における研究項目(3)クリープ特性の温度・方位・応力依存性ならびに支配因子の解明および(4) について主に実施する予定である。まず、C40単相単結晶と複相シリサイドにおいて1000°C~1500°Cにて圧縮試験を行い、降伏応力の温度・方位依存性についてC40相の底面すべり系とC11b相の[001]方位に着目し解明する。さらに圧縮試験後のそれぞれの試料において電子顕微鏡(TEM観察)によるコントラスト解析を行い、変形に寄与する活動転位を決定するとともに単純圧縮時における変形モードについて理解を深める。その上で、複相シリサイド結晶をスタート材として温度および応力を変化させてクリープ試験を行い、得られたクリープ曲線から最小歪速度、応力指数、活性化エネルギーの算出を行う。具体的には本年度で作製した複相シリサイド結晶に対し荷重軸が層状組織界面と0°(最強方位)ならびに45°(最弱方位)となるような角柱試験片を切り出し、高純度Ar flow雰囲気下にて圧縮クリープ試験(1200°C~1400°C)を行う。試験中の歪変化は光学式非接触ひずみ計を用い測定する予定である。進捗が予想以上に進むようであれば、クリープ試験後の試料における組織について光学顕微鏡観察、SEM-EBSD測定およびTEM観察を実施し、層状組織形態の変化、クラック伸展、粒界すべりの有無等を検討する予定である。
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備考 |
[1] 第26回日本金属学会 奨励賞 物性部門, 2016年9月21日. [2] 軽金属学会第131回秋期大会 優秀ポスター賞:○Liu Tianqi, 當代光陽, 中野貴由,2016年11月5日.
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