研究課題/領域番号 |
16K18263
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
戸部 裕史 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40743886)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高温形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / 析出物 |
研究実績の概要 |
実用化へ向けた新規高温形状記憶合金の開発のため、チタン-ニッケル-ジルコニウム(TiNiZr)三元系合金をベースとして合金の組成を変化させ、100℃以上の高温で使用可能とすること(すなわちマルテンサイト相から母相への相変態が100℃以上で生じること)、析出物を形成させ高温の使用環境下での強度を増加させること、結晶構造を制御して駆動に必要な相変態や歪みを生じやすくすることを目的とした。昨年度(1年目)においては、ベースとしたTiNiZr合金のNiをパラジウム(Pd)に置き換えた合金において、上述の全ての特性を満たす合金が得られたが、使用温度下に長時間保持された場合に新たな析出物が生成されることにより、繰り返し使用の際に形状記憶特性が劣化していくという課題が生じた。そこで、2年目は本課題の解決に向け、合金組成を調整することで、析出物の種類や生成温度範囲を変化させることを試みた。合金のPd含有量を減らす代わりに銅(Cu)を添加し、析出物形成に及ぼす影響を調査した結果、使用温度下における析出物の生成が抑制され、安定した繰り返しの相変態を確認できた。一方で、相変態の温度はCuの添加により低下したため、合金組成によっては100℃以上の高温で駆動できなくなるものがあった。今後は、Cu添加による相変態温度の変化を考慮したさらなる合金組成の調整と、形状回復歪み量などの詳細な形状記憶特性の評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の計画においては、合金組成の調整や熱処理条件を変化させて、析出物の種類や生成温度範囲、サイズ、密度を制御することで、繰り返しの形状記憶特性を改善することを目的とした。その結果、特にCuを添加することで使用温度下における析出物の生成を抑制でき、繰り返しの相変態を安定化させることができた。本成果により得られた合金に対し、詳細な形状記憶特性の評価を進めており、研究は順調に進展していると考える。一方で、Cu添加により相変態の温度が低下したことにより、合金によっては100℃以上の高温で駆動できなくなるものも生じたため、当初の計画通り、3年目には合金組成と熱処理条件をさらに調整することで、相変態温度の制御を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、2年目までに得られたTiZrPdCu四元系合金の形状記憶特性を詳細に調査し、結果を踏まえて合金組成の最適化を行う。最適化にあたっての組成調整量については、これまでに明らかにしてきた各構成元素(Ti, Zr, Pd, Cu)の添加量と種々の特性(相変態温度など)の変化量との関係性から決定する。以上より、100℃以上の高温で使用可能であり、析出物により高強度を有し、最適な結晶構造により駆動に必要な相変態や歪みが生じやすく、繰り返し特性に優れた合金の開発を目指す。
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