材料の性質は,顕微鏡等により観察できる組織の存在形態(大きさや形状など)と強い相関を持っていることはよく知られている.組織形態を正確に評価することで,材料の性質を推定できるだけでなく,発現メカニズムの解明や性質の向上,製品生産技術の改善等に応用が可能である.一方で,現在は組織形態評価は人間の判断の占める割合が大きく,評価者の「感性」に大きく左右される.またそのため大量の情報を処理することも困難である.本研究はこの人間の「感性」を定量化するための有力な技術のひとつである「マセマティカル・モルフォロジ」を用いることで,金属組織の自動定量評価するための技術の確立を目指すものである. 初年度はこのセグメンテーション技術に関し、半凝固金属の初晶を人間の感性に近い形で半自動的に抽出する技術に関する開発を行った。Watershed手法を適用し、その他周辺技術を改善することで写真の撮り方によりバラツキの多かった自動セグメンテーションの精度を上げることができた。 2年度はこれらの成果をもとに,半凝固金属の組織写真やメタセラ材料の扁平粒子の形態評価を行った.半凝固金属の組織については,自動評価対象の相の大きさによってWatershed法を複数回適用すること,またオープニング操作と組み合わせることで,目的の組織の抽出効率を格段に向上させることに成功した.またメタセラ材料についてはマーカーと呼ばれる印を手動で付することで,半自動的に形状抽出が可能となった.また扁平率についても短辺と長辺の抽出自動化技術を開発することで,湾曲した粒子に対する扁平率算出精度と効率を大幅に向上することが出来た.
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