研究課題/領域番号 |
16K18265
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
梶川 翔平 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (00772815)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 材料加工・処理 / 塑性加工・成形 / 木質系材料 / 高圧蒸煮 / 循環型資源 |
研究実績の概要 |
H29年度は,H28年度に整備した機器を用いて木質系粉末の流動・成形性評価を実施した.また,高圧蒸煮プレス金型の設計・製作を進めた.得られた成果は以下の通りである. (a)糖類およびクエン酸を混合した木粉の流動性および成形性に関する検討を行った.高圧蒸煮プレスによって生成されると考えられる糖類(流動特性活性化成分)に対して,クエン酸を混合することによって,両者が結合し,成形品の強度および耐水性の向上が期待できる.金型温度が180℃にて試料は良好に流動し,添加剤の配合比(糖:クエン酸)は流動性に大きく影響しないことがわかった.試料を流動させるにあたって必要な加圧力は適正条件下にて30 MPa程度であり,一般的な木質プラスチックと同程度の流動性を有していることがわかった.また,試料の粒子サイズは流動性に大きく影響し,粒子サイズが大きいほうが高い流動性を示すことがわかった.このメカニズムに関しては現在検討中であるが,素材の粉末化に必要なエネルギが削減できるため,有益な情報である. (b)糖類およびクエン酸を混合した木粉の射出成形を行ったところ,試料は金型温度が180℃の時に,金型内を良好に流動し,プレートの作製が可能であった.得られたプレートを24時間水に浸漬した結果,成形品は崩れることなく,厚さの膨張率も10 %以下であった.本結果より,成形品は実用に耐えうる耐水性を有していることがわかった.また,蒸煮プレス後の木粉にクエン酸を添加することによって,成形品の耐水性を向上できる可能性が示唆された. (c)高圧蒸煮プレス金型を設計するにあたって,適正な上記排出弁の位置や,金型内部を密閉しつつ材料をプレスするための構造に関して検討を進めた.必要な部品の加工および金型の組み立てが完了し,高圧蒸煮プレス実験を行う準備が整った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧蒸煮プレス用の金型の作製が完了したことによって,本研究に必要な設備を全て整えることができた.また,流動特性活性化に影響する成分を添加した木粉の流動性・成形性に関しても当初の計画以上の知見が得られている.
|
今後の研究の推進方策 |
[流動特性活性化に影響する成分を添加した木粉の流動性・成形性評価] 射出成形品の力学試験を行い,強度を調査する.特に,H29年度の調査にて木質系粉末の粒子サイズが大きい条件にて流動性が高くなったが,流動性のみならず,強度に及ぼす影響も明らかにすることによって,適正な粒子サイズを提案する. [高圧蒸煮プレスに関する検討] 高圧蒸煮プレスによって,改質ボードを作製し,その成形性に関する検討を中心に行う.主な高圧蒸煮プレス条件は,処理時における温度・水分量および圧力であり,これらの条件が改質ボードの成形性に及ぼす影響を明らかにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会発表を見送ったため,旅費を中心に残額が生じた.次年度では,今年度に発表できなかった成果を,学会や学術雑誌への論文投稿によって発表するために,当該年度に生じた残額を使用する.
|